研究課題/領域番号 |
26410054
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
北村 充 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10313199)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ジアゾナフトキノン / ジアゾ移動反応 / グアニジノジアゾニウム塩 |
研究実績の概要 |
芳香族化合物への置換基導入は有機合成化学において基礎的かつ重要な反応である。代表的な手法に求電子置換反応があるが,導入される炭素置換基はアルキル基やアシル基に限られ,アリール基やホモアシル基の導入(カルボニル化合物のα-アリール化)はできない。一方,近年,鈴木-宮浦反応に代表されるPd触媒によるハロゲン化アリール(Ar-X)のクロスカップリング反応の開発は目覚ましく,求電子置換反応では合成が難しいビアリールなどが容易に合成できるようになっている。しかし,立体障害の大きなビアリール合成やフェノール類への適用は限られている。芳香族を有する生理活性物質や機能性材料は多く,多置換芳香族化合物を自在に合成する手法の開発の需要は非常に高い。1,2-ジアゾナフトキノン(DNQ)はα-ジアゾカルボニル化合物とアリールジアゾニウムの性質を示すことが予想され,多置換芳香族合成における有用な中間体として魅力的な化合物である。DNQはフォトレジストとして,工業的に利用されているものの,これまで芳香族合成において注目されなかった。一般的で簡便な合成法がないことが大きな原因である。我々は新たな1,2-ジアゾナフトキノンの簡便合成法を開発した。すなわち,グアニジノジアゾニウム塩が優れたジアゾ化能を有することを見出し,ナフトールにグアニジノジアゾニウム塩を反応させると,位置選択的に1,2-ジアゾナフトキノンが高収率で得られることを明らかにした。さらに,ジアゾナフトキノンと遷移金属錯体との反応により生じたカルベン錯体を中間体として,ナフトールのホモアシル化反応を開発し,これを利用して天然物コシノスタチンの部分構造の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究での研究対象とするジアゾナフトキノンの簡便な合成法を確立し,論文報告した(Bull. Chem. Soc. Jpn). また,ジアゾナフトキノンを用いてナフトールのホモアシル化を開発し,これを利用して天然物のコシノスタチンの部分構造の合成に成功し,その内容を論文報告した(Tetrahedron Lett. 2014, 1653). このように新しい結果を導き,その報告を着実に行っているため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従いい,ジアゾナフトキノンを用いた反応開発に取り組む。特にビアリール化合物合成に取り組み,開発した反応を利用してビアリール型天然物の合成に取り組む。また,アントラノール由来のジアゾキノンを用いてそのホモアシル化を実現させ,コシノスタチンの合成に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
学生の配属予定が,予定より少なかったため,当初たてた予算額をすべて使用しなかった。2015年度は既に新しい学生の配属が決定しており,2015年度は予定より多い学生を本研究に配置し,研究を推進する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通り,試薬(ガラス器具,溶媒,試薬)などの消耗品費,および,旅費に使用する予定である。
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