研究課題/領域番号 |
26410059
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松本 浩一 近畿大学, 理工学部, 講師 (60581741)
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研究分担者 |
若林 知成 近畿大学, 理工学部, 教授 (30273428)
森澤 勇介 近畿大学, 理工学部, 講師 (60510021)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機電解合成 / ラマン分光法 / 有機活性種 / 反応機構 |
研究実績の概要 |
本研究では、有機電解合成にラマン分光を導入して、通常観測することが難しいような中間体を検出し、反応機構解明や合成化学へ応用することを目的としている。これまでの検討により、H型の電解セルの陽極室のラマン分光測定を行うと、感度が低く分解能の悪い結果しか得ることができておらず、細かな解析ができていなかった。また、-78度のような極低温下のもとで電解合成のラマン測定を行うと、霜が付き測定に支障をきたすなどの問題点があった。そこで、本研究ではこれらの問題点の解決を目指すべく検討を行った。今年度は、低温条件下でも霜がつくことなく測定できるように電解セルとそれに装着させる円筒形セルを作成し、その円筒形セルを陽極室に装着した。円筒形セルに光学ファイバーを埋め込み真空ポンプで霜の原因となる空気を引きながら観測するシステムを開発した。このシステムにより霜がつくことはなくなり、また光学ファイバーは反応溶液の近くに設置することができ、感度の向上が認められた。 本研究では、我々がすでに確立したArSSAr(ジアリールジスルフィド)の低温電解反応をモデル反応として、開発したシステムで観測を行ったところ、通電量とともにArSSArの消失を確認できるとともに、ArS(ArSSAr)+の増加が観測された。また、一定の電気量以上では、反応系中で副反応が生じ、活性種が分解することを示唆する結果も得られた。従来までの観測方法では感度が悪かったが、本システムにより細かなスペクトルも得られ、活性種に関する多くの情報を得ることが可能となった。また、観測された結果について、DFT計算による考察も行った。以上の結果は、有機電解合成での反応条件最適化のツールとして、ラマン分光法が有効な手法であることを示すだけでなく、低温下での不安定中間体の検出にも活用できることを示唆していると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では低温条件下でラマン測定を行い、活性種の検出、同定をして、反応機構の解明や合成化学に応用することを目標としている。平成26年度にモデル反応を用いて、その基盤となる電解反応システムを確立することができ、今後の研究の基礎が確立された。平成27年度はいろいろな低温条件での有機電解反応に対して、本システムを適用して新規な反応中間体の同定や不安定活性種の捕捉に挑戦していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
我々はすでに、不安定なアルコキシカルベニウムイオンを、チオアセタールと電気化学的に発生・蓄積したArS(ArSSAr)+との反応により瞬時に発生・蓄積できることを見出している(インダイレクト・カチオンプール法)。平成27年度では、このインダイレクト・カチオンプール法により蓄えた不安定なアルコキシカルベニウムインや、より不安定な炭素カチオンのラマン分光による観測と反応速度の評価などを中心に検討を行う。活性種の安定性などの評価を行い、得られた情報を合成化学へフィードバックさせる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用予定の学会出張を取りやめたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度取りやめた出張に使用する予定である。
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