研究課題/領域番号 |
26410062
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
日夏 幸雄 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70271707)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 希土類 / ぺロブスカイト / 結晶構造 / 磁気的性質 / ビスマス / アンチモン |
研究実績の概要 |
希土類が物性の主役となったぺロブスカイト型酸化物の多形構造とその磁気的性質を調べるため、ぺロブスカイト型酸化物ABO3の物性を決定するBサイトに希土類(4f電子系)とサイズの小さな遷移金属(4d、5d電子系)を組み合わせた複合酸化物を合成した。磁気的性質から希土類が示す物性、f-d混合電子が示す新たな物性、挙動を解明した。希土類と遷移金属の比を変え、BO6八面体の並びに特異な積層構造を持たせ、これまでにない物性の発現と挙動解明を目指した。 今年度は遷移金属として、post-transition metalsと呼ばれるアンチモン(Sb)とビスマス(Bi)を選び、AサイトはBaとしたBa2LnMO6 (M = Sb, Bi)の合成と結晶構造解析、その磁気的性質の測定を行った。希土類がランタン(La)からルテチウム(Lu)に亘ってBサイトでLnとMがNaCl型に秩序配列したダブルぺロブスカイトが合成できた。化合物の結晶系はcubic、rhombohedral、monoclinicあるが、希土類のイオン半径とtolerance factorで系統的に分類されることを明らかにした。いずれの化合物も1.8 Kまで常磁性を示した。メスバウア分光測定からEuは+3価の酸化状態にあることを解明した。Ba2EuBiO6ではEuサイトに四極子相互作用があることを定量的に明らかにした。 Ba2LnBiO6(Ln = Pr、Tb)では、一部のLnが+4価に酸化され、その分Biは+3価に還元されていることを、結合距離、磁気的性質の解析から明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね順調に進んでおり、新しいテーマで論文まで出すことができた。しかし、研究用原子炉(茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構に設置されている全国大学共同利用施設)が平成26年度も稼動しなかったので、中性子回折実験が行えず、X線回折測定と相補的に使用した構造解析、また磁気構造の測定とその解析が行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の結果、経験をもとに、遷移金属と希土類元素が構造的に秩序化したペロブスカイト化合物の新規合成を試みる。Bサイトに入る元素が構造的にオーダリングする場合、しない場合について、その原因を結晶化学の視点から考察する。その結果をもとに、Aサイトに入る元素をアルカリ土類金属(+2価)だけでなく、アルカリ金属(+1価)、Ga、Laなど+3価をとる金属元素を入れることで、Bサイトに入る金属元素の酸化状態を変えた化合物について、検討する。 平成26年度と同様、X線回折、中性子回折、磁化率、比熱等の測定を行い、合成した新規化合物の結晶構造、電子構造、磁気的性質を主とした物性を測定・解析し、d-f混合電子系の示す新しい物性の探索を行なう。 さらに、必要に応じ、メスバウア分光測定、電子スピン共鳴(ESR)測定を行い、Bサイトイオンの内部磁場、結晶電場、化学的環境に関する知見を得る。磁性イオンの局所構造、およびその磁性イオンと周りとの磁気的挙動を明らかにするためには、メスバウア分光測定は有効な研究手段であり、希土類元素については151Euを、また遷移金属については57Feを、磁性イオンサイトにドープし、局所構造に関する情報を得る。また、得られた成果を国内、国外の学会で積極的に発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に欠かせられない液体ヘリウムを、平成26年度は他の財源から支出することができ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
磁化率測定装置、比熱測定装置、メスバウア分光測定装置、いずれもその稼動には多量の液体ヘリウムを消費するので、平成27年度の液体ヘリウム代として使用する。
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