研究実績の概要 |
ぺロブスカイト型酸化物ABO3の物性を決定するBサイトに希土類(4f電子系)とサイズの小さなレニウム(5d電子系)を組み合わせた複合酸化物Sr2LnReO6(Ln = Y, Tb-Lu)を単相で新規合成した。レニウムと希土類はBサイトでNaCl型に構造秩序していることをX線回折測定より明らかにした。磁化率、比熱測定から希土類がY, Tb, Dy, Yb, Lu化合物では 低温(2.5-100 K)で反強磁性転移していること、そのほかの化合物は、1.8Kまで常磁性挙動を示すことを見出した。磁気比熱から磁気エントロピーを算出し、この磁気転移にはレニウムと希土類のスピンが関与していることを定量的に示した。
さらに本年度は、トリプルぺロブスカイトBa3LnM2O9 (Ln = 希土類、M = Ru, Ir)の構造とその磁気的性質の解明にも取り組んだ。結晶構造はLnO6八面体とM2O9ダイマーが交互に配列した6層ぺロブスカイト構造をとることがわかった。MサイトにRu, Irどちらも含むBa3Nd(Ru1-xIrx)2O9 (x = 0-1)の合成にも成功し、その結晶構造は、Irの置換割合を増やすとx = 0.8を境に六方晶から単斜晶に変化することがわかった。磁気的性質は両端組成の x = 0, 1ではフェリ磁性だが、固溶により強磁性磁気モーメントが減少し、x = 0.5でフェリ磁性が最も弱くなった。これは(Ru/Ir)2O9ダイマーとNdの4f電子の磁気的相互作用が変化したことによると考えられる。
|