研究実績の概要 |
ペロブスカイト型酸化物(ABO3)ではBサイトに入る金属元素の電子状態が化合物の物性に大きな影響を与え、希土類元素(Ln)と遷移金属(M)をBサイトに共に含む化合物では、これらの間に働く相互作用による特異な磁気的挙動を示す。また、LnとMの割合を変化させるとBO6八面体間の結合に、頂点共有 / 面共有が混在した六方晶ペロブスカイト構造が現れ、その構造を反映した新奇な物性の発現が期待される。本年度の研究では、遷移金属にマンガン(Mn)を選び、希土類元素とMnの比をLn:Mn = 1:3とした4重ペロブスカイトBa4LnMn3O12の合成と構造およびその磁気的性質の解明に取り組んだ。結晶構造は、LnO6八面体と、3つのMO6八面体が面共有したMn3O12トライマーが交互に配列した12層ぺロブスカイト構造(空間群:R-3m)をとることがわかった。Mnの価数はXANES測定から4価であることが明らかとなった。格子定数は3価の希土類イオン半径とともに単調増加する傾向があるが、Ln = Ce ,Pr, Tbではこの傾向から逸脱し、このことからLnは4価の状態にあると考えられる。従ってこれらの化合物の電荷配置は、Ln = Ce, Pr, TbではBa4Ln4+Mn4+3O12、その他の希土類では酸素欠損が生じBa4Ln3+Mn4+3O11.5と考えられる。希土類が反磁性であるCe, Lu化合物でそれぞれ8.5, 3Kで反強磁性転移が見られ、トライマー内のMn4+間の強い磁気的相互作用によることがわかった。希土類が磁性を持っている化合物では、磁気転移温度の上昇が見られ(転移温度13-40K)、希土類の4f電子とMn3O12トライマーの磁気的相互作用によることを、比熱測定結果から求めた磁気転移に伴う磁気エントロピー変化量から定量的に示すことができた。
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