研究課題
本研究は、申請者が見出してきたPt(II)、Ru(II)錯体配位子からなる発光性配位高分子を基盤として、1)配位モジュレーション法を用いたメゾスコピック領域へのダウンサイジング、2)光アンテナ系構築と電子正孔対の空間分割を目指した機能性分子の表面固定化、の2つを合成化学的アプローチの軸足に、メゾスコピック領域における光励起エネルギーダイナミクスの解明と制御法の開発を目的に研究を展開してきた。研究最終年度となる平成28年度では、方針1において、発光性Ru(II)配位高分子の合成過程に対して、ラウリン酸を配位モジュレーターとして用いることで、長さ500-1000 nm程度、厚さ10-30 nm程度の均一なナノ結晶を生成することを見出した。興味深いことに、得られた配位高分子が3次元格子構造を有する場合には、バルク結晶とは著しく異なる水蒸気吸着特性を示す一方、2次元シート構造を有する場合には、バルク結晶と酷似した振る舞いを示すことを明らかとした。方針2では、水素発生触媒となるPt担持酸化チタンナノ粒子に対して、ホスホン酸基を有する発光性Ru(II)錯体配位子を表面へ固定化すると、Ru(II)錯体を1層固定化したナノ粒子よりも、Zr(IV)イオンを介して2層固定化したナノ粒子のほうが、光水素発生触媒能が3倍も増強されることを見出した。本反応において用いたRu(II)錯体のモル量は一定であり、担持しているPt触媒量も等しいことから、光吸収強度および水素発生過電圧に差は無いと考えられる。従って、2層固定化による増強効果は、励起子から電子と正孔を分離する効率が向上したことが主因と考えられる。この発見は、太陽光エネルギーからクリーンエネルギー源となる水素を生成する光電荷分離プロセスの改善に資するものであり、さらなる発展が期待できる有望な成果と言えよう。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 12件、 謝辞記載あり 12件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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