研究課題/領域番号 |
26410064
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
星野 哲久 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (30551973)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スピンクロスオーバー / 固体内分子運動 / 相転移 / 原子価互変異性 / 分子磁性 / 分子性誘電体 |
研究実績の概要 |
本研究ではスピンクロスオーバー錯体に分子ローターをカップリングさせ、格子振動を介した新しいスピン状態制御の確立に向けて検討を行っている。前年度は分子ローターアニオンを用いたスピンクロスオーバー錯塩の結晶性が予想よりも悪いこと、また得られた結晶中で、分子ローターの回転運動が予想よりも励起されづらいことが判明し、問題となっていた。 本年度は以上の問題に対処するため、まずアセチルアセトナト錯体などの非常にシンプルな錯体に分子ローターを導入することによって、どのような分子構造・結晶構造が回転運動を励起しやすいのか、基礎的な検討と研究計画の見直しを行った。その結果、配位部位をもつ分子ローター(キヌクリジン)のアンモニウム塩をカウンターイオンとして導入した場合は分子ローターでは回転運動の励起が見られなかったのに対して、一方で分子ローターを直接金属イオンに配位させた錯体では、常温よりも低い温度で回転運動が励起されることを見出した。 そこで物質探索の範囲をアニオン性錯体の分子ローター塩だけでなく、中性で球状分子が直接金属イオンに配位したスピンクロスオーバー錯体の合成について検討を行ったところ、スピンクロスオーバー現象の一種である原子価互変異性を示し、キヌクリジンが直接配位したコバルト2価錯体の結晶を得ることに成功した。今後はこの錯体の転移挙動について細かく検討を行うとともに、分子ローター部のサイズや極性の異なる一連の錯体を合成し、その回転運動と転移挙動の相関について詳しく検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の研究では、予定していた分子ローターとスピンクロスオーバー錯体のイオン結晶作成が困難であること、および分子ローターの回転運動が励起されにくいことが判明し、問題となっていた。今年度は問題を解決するため、よりシンプルなモデル錯体を用いて分子設計の見直し検討を行っていたため、予定の研究計画よりは遅れている。 しかしながらこの追加検討によって、イオン結晶よりも中性錯体の方が結晶性と回転運動励起の両面において有利であることを見出し、また分子ローターが直接金属イオンに配位した中性錯体の合成ノウハウを得ることができた。その結果、コバルト2価原子価互変位性錯体において分子ローターが直接配位した錯体を得ることに成功した。以上の成果によって、次年度では研究の遅れを取り戻す目処が付いたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られたコバルト2価錯体について、回転運動励起とスピン転移挙動をX線散乱・磁気測定・電子スペクトル測定等を用いて詳細に明らかにする。また分子ローター部のサイズや極性の異なる一連の錯体を合成し、その回転運動と転移挙動の相関・誘電的機能の付加等について詳しく検討を行う。さらに種々のスピンクロスオーバー錯体について同じアプローチで分子ローターの導入を試みる。
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