研究課題
本研究では、自己組織化によって構築できるグリッド分子をもちいて、電気化学的な操作やその他の外場によって、多くの安定状態をとりうる分子素子の開発を目的として研究を行った。特に[3×3]グリッド型分子に着目し、様々な金属イオンを含む一連のグリッド型錯体を構築し、外部刺激によって数多くの安定状態をもつ分子素子の開発を目指して研究を進めた。これまでに、[3×3]グリッド状Cu9核錯体およびグリッドの中心に鉄イオンを含む混合原子価[Cu8Fe]錯体を合成している。これらのグリッド型錯体は可逆な酸化還元を示すことを明らかにしており、それぞれの酸化体・還元体の単離に成功している。この[Cu8Fe]グリッド型錯体の酸化体および還元体の分子構造・磁気的性質について詳細に調べ、各電子状態を明らかにした。特に2電子酸化体は室温以上で中心のFe(III)イオンがスピン転移することを見出した。これはスピン転移を示す異種金属多核錯体として珍しい例である。また、グリッドの中心にコバルトイオンをふくむ[Cu8Co]錯体の合成にも成功しており、5段階の可逆な酸化還元を示すことを明らかにした。さらに、鉄イオン過剰の条件では[Fe5Cu4]錯体が得られることが明らかとなった。この錯体はグリッドの頂点に4配位のFe(II)イオンが位置しており、特異な配位環境に基づく電子物性が期待される。また、[2×2]グリッド状錯体を構築可能なイミダゾール系配位子の機能拡張を目的として、配位子修飾も行った。カルボキシル基やヒドロキシル基を導入した[2×2]グリッド型[Fe4]錯体の構築に成功し、スピン転移を示すことを明らかにした。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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