27年度に合成した[Rh2(O2CEt)3(Hdhq)]は,極性溶媒への溶解度は比較的良かったが,ジクロロメタンなどへの溶解度が低かったため,アルキル基をさらに長くした[Rh2(O2CBu)3(Hdhq)]の合成を行った.錯体はアセトニトリル,メタノール,ジクロロメタンに溶解し,アセトニトリル中とジクロロメタン中では異なる電位で酸化されることが明らかとなった.これは,アセトニトリル中では溶媒がNH部分に水素結合し,ジクロロメタン中では二量化しているためと考えられる.しかし,ジクロロメタン中でも段階的な酸化は観測されず,さらに測定条件の検討が必要である.今後,溶液中の水の濃度の影響も検討する予定である. ハーフランタン型ビスベンズイミダゾレート錯体二量体[Rh2(O2CPr)2(Hbbim)2(PPh3)2]2については,ビイミダゾールが配位し,アキシャル位に塩化物イオンが配位した錯体[Rh2(O2CPr)2(H2bbim)2Cl2]を0.1 M 塩酸/メタノールに溶かして,Sephadex LH-20によるゲルろ過を行うことにより精製し,十分な純度の[Rh2(O2CPr)2(H2bbim)2(PPh3)2]Cl2,および[Rh2(O2CPr)2(Hbbim)2(PPh3)2]2を得ることが出来た.これら2つの錯体の酸化電位は,それぞれ対応するビイミダゾール錯体[Rh2(O2CBu)2(H2bbim)2(PPh3)2](PF6)2,および[Rh2(O2CBu)2(Hbbim)2(PPh3)2]2とほとんど変わらず,ベンゼン環による立体的な効果はほとんどないと考えられた. HOMOをδ*軌道にするために合成している錯体は,安定性が低く単離には至っていない.
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