研究実績の概要 |
本研究の目的は,低温で電荷密度波(CDW)に由来した非線形伝導や光応答などの興味深い特性を示すことで知られるブルーブロンズ(M0.3MoO3, M=K,Rb,Cs,Tl)を特定の結晶方向でCDWのコヒーレンス長以下のサイズに調製した針状単結晶(ナノリボン)試料の電子物性を詳しく調べることである. 本年度の研究ではK0.3MoO3,Cs0.3MoO3ナノリボンを調製し,それらの組成・構造についてTEM,STEM,SADD,EDSなど用いて詳しく調べると供にそれら単一ナノリボン粒子の電気物性を調べるために単一ナノリボン粒子の電気物性測定用試料調製法の検討・確立を目指し,様々な溶液中でのナノリボン試料の分離・分散法や単一ナノリボン粒子の電気伝導度測定に適したナノリボン粒子の基板への載置法について調べた. それによりK0.3MoO3,Cs0.3MoO3ナノリボンの組成・構造の詳細について明らかにすることができた.また,合成されたナノリボン試料から適当なサイズのナノリボン粒子を分離・分散させるにのに適した溶媒や分離処理条件を明らかにすることができ,それらの方法を利用して単一粒子の電気物性を測定するのに適した状態で単一ナノリボン粒子を基板上に載置する方法を確立することもできた.そして,その方法を用いて基板上に載置されたブルーブロンズの単一ナノリボン粒子の電気物性を擬似4端子法で測定することにも成功した(これらの研究成果は,日本化学会第95春季年会で報告された).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終的な研究目的は,低温で電荷密度波(CDW)に由来した非線形伝導や光応答などの興味深い特性を示すことで知られるブルーブロンズ(M0.3MoO3, M=K,Rb,Cs)を特定の結晶方向でCDWのコヒーレンス長以下のサイズに調製した単結晶(ナノリボン)試料の電子物性を詳しく調べることであるが,本年度の計画では特に単一ナノリボン粒子の電気物性を調べるための電気物性測定用の試料調製法の確立を目指しており,ナノリボン試料の分散法や基板への載置法を詳細に調べた結果,擬似4端子法ではあるが,単一粒子としてのブルーブロンズ・ナノリボンの電気物性を測定することに成功した.この成果が本年度達成することを目指した目的に合致するため.
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