本研究は、独自に発見した「ガドリニウム(III)錯体が示す新規な発光性フォトクロミック現象(光照射と酸素添加によって発光色が可逆に変化)」を手掛かりに、ガドリニウム(III)錯体の光機能を開拓するものである。研究期間内(3年間)に、上記現象を支える諸光物性と分子構造との相関を明らかにし、新規な光機能材料創製の基礎(分子設計指針)を確立する。具体的には、新たに光応答性ガドリニム(III)錯体を設計・合成し、高効率な光増感剤や超高感度酸素センサーとしての応用を視野に入れた「光機能開拓研究」を展開する。 平成26年度は、実施計画に沿って、ガドリニウム(III)およびテルビウム(III)錯体を新規に設計・合成し(重点課題1)、合成した錯体の光物性「発光色、量子収率、発光寿命等」を調べた(重点課題2)。その結果、ガドリニウム(III)錯体の分子構造と光物性との相関が明らかとなり、光応答機能の自在制御に繋がる分子設計指針を得ることができた。さらに興味深いことに、本研究で開発した配位子を用いたテルビウム錯体が、優れた酸素応答性と発光量子収率(91%)を示すことを見出した。すなわち、当初予定していた光機能性ガドリニウム錯体の開発における分子設計指針が得られると同時に、優れた酸素応答機能を有する発光性テルビウム錯体を新たに発見することができた。これらの成果は、2014年光化学討論会で発表するとともに(Photochemical & Photobiological Science Presentation Prize(RSC)および優秀学生発表賞(光化学協会)を受賞)、1報の学術論文にまとめた。
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