研究実績の概要 |
本研究は、独自に発見した「ガドリニウム(III)錯体が示す新規な発光性フォトクロミック現象(光照射と酸素添加によって発光色が可逆に変化)」を手掛かりに、ガドリニウム(III)錯体の光機能を開拓するものである。研究期間内(3年間)に、上記現象を支える諸光物性と分子構造との相関を明らかにし、新規な光機能材料創製の基礎(分子設計指針)を確立することを目指した。具体的には、新たに光応答性ガドリニム(III)錯体を設計・合成し、高効率な光増感剤や超高感度酸素センサーとしての応用を視野に入れた「光機能開拓研究」を展開した。 最終である平成28年度は、平成26,27年度に得られた「合成した錯体の光機能」に関する知見をもとに、応用を意識した研究に取り組んだ。その結果、(1) 平成27年度に開発した「結晶状態で室温リン光を示すガドリニウム錯体」に関しては、結晶の調製時に極微量の有機物を添加することで、発光色が制御できること明らかにした。(2) ガドリニウム錯体の光物性の解明を通して発見した「酸素応答機能を有するテルビウム錯体」を用いて、優れた性能・性質を示す光学式酸素センサーを開発することができた。さらに、(3) 上記、ガドリニウムおよびテルビウム錯体の発光メカニズムに関する知見をもとに、「酸素に応答する発光性ディスプロシウム錯体」を初めて合成することに成功した。上記成果および本研究遂行に伴い派生した成果は、2016年光化学討論会等で発表するとともに3報の学術論文としてまとめた。
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