研究課題/領域番号 |
26410075
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
鯉川 雅之 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90221952)
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研究分担者 |
山田 泰教 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20359946)
米田 宏 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50622239)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分子磁性 / 包接 / イオン液体 |
研究実績の概要 |
今年度はピラミッド型三核Mn(III)錯体中のMnイオンの一つをNi(II)に置換したMn-Niヘテロ金属錯体の合成と磁気的性質の解明を中心に研究を進め,また新たな試みとして目的錯体よりも分子サイズが小さく,Mnイオン間にスピンフラストレーションに基づく強い強磁性的相互作用が働いているN-(2-ヒドロキシメチルフェニル)サリチリデンイミンを配位子とする正三角形型三核Mn(III)錯体の陰イオン交換によるイオン液体化に取り組んだ。 Mn-Niヘテロ金属系三核錯体は次の手順で合成した。まず,架橋型5座配位子と塩化ニッケル六水和物をピリジン中で反応させることで,多核Ni(II)錯体 [Ni(L5-Br)(py)(H2O)]nを得た。この錯体とピラミッド型三核Mn(III)錯体[Mn(L5-Br)(py)]3をピリジン中,モル比1:2で反応させることによりNi:Mnの分析比が1:2となる(NBu4)[Mn2Ni(L5-Br)(py3)]を得ることができた。この錯体の磁気的性質をSQUID法による調べた結果,金属イオン間にはほとんど相互作用が働いていないことが示唆された。これは,従来得られている三核Mn(III)錯体や昨年度合成した三核Mn(III)2Cu(II)錯体の性質とは大きく異なっていた。残念ながら単結晶X線結晶構造解析が可能な単結晶を得るには至っていないため構造に関する議論は行えないが,ピラミッド型構造ではない直線あるいは折線型構造をとっているものと考えられる。 新たに始めた別種のMn(III)錯体,[Mn3(OH)(L1-H)3(solvent)3]Clの陰イオン交換によるイオン液体化を検討した。検証した対イオンの中では,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを陰イオンとして用いた場合に,本錯体を油状物質とすることができることを発見した。今後,この油状物質の凝固点や含水量を定量してイオン液体であるかどうかを明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回合成したピラミッド型ヘテロ金属Mn2Ni三核錯体は,磁気的性質を調べることはできたものの,いまだ錯体分子構造が明らかになっていないため構造と磁性の関係に関する議論が曖昧であり,また陽イオン交換による低融点化もいまだ実現できていない。一方で,新たに取り組み始めた小型三核Mn(III)錯体の陰イオン交換では,まだ同定には至っていないものの室温で高粘度の油状の形態をとっているため低融点化には成功していると思われる。いずれにせよ,はっきりとしたイオン液体を得るに至っていないため現在の進行状況は「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
新たに取り組み始めたN-(2-ヒドロキシメチルフェニル)サリチリデンイミンを配位子とする正三角形型三核Mn(III)錯体の修飾に集中的に取り組み,①単純に長鎖フルオロ系置換基を有する適当な陰イオンを選別する,②錯体にハロゲンもしくは擬ハロゲンイオンイオンを配位させることでアニオン性錯体とし,これと各種イミダゾリウムイオンを組み合わせることでイオン液体化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の全世界的なヘリウム供給不足の結果生じた液体ヘリウム代金の残額分が,ほぼそのまま残ったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は液体ヘリウム見積額がもともと少なかったため,残額分を使えば前年度と同様の測定が行える。測定サンプルも十分な本数が揃っているため当初配分計画よりも効率の良い使い方ができると考えられる。
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