研究課題
これまでの実績から軌道修正を図ってカプセル構造の構築を確実にするために,今年度は新たな試みとして,①従来と異なるN-(2-ヒドロキシメチルフェニル)サリチリデンイミンを用いた三核Mn錯体ユニットの合成,②静電相互作用を最大限に利用するためのユニット錯体の電荷制御,これらを目的として研究に取り組んだ。カプセル構造のベースとなる三核Mn錯体には溶媒分子が単座配位している配位部位が存在するが,この部分はハロゲンイオン等の単純な単座配位子で置換可能と考えられる。そこで,この配位溶媒をハロゲンイオンで置換した三核錯体の合成と,この錯体を利用したヘテロ金属カプセル型錯体の合成を行った。配位MeOHを減圧下で加熱乾燥することにより取り除き,その錯体を非配位性溶媒中でテトラブチルアンモニウムブロミド(NBu4Br)を反応させ,Br-イオンの配位を吸収スペクトルにより調べた。NBu4Brの添加量の増加とともにスペクトルは変化し,Br-イオン配位による新たな吸収帯が出現することから,Brイオンの配位が示唆された。塩化物イオンを用いた場合も同様の傾向が見られ,固体微結晶を単離することができた。現在のところ分子構造は不明であるが,カプセルユニット構造を維持したイオン性化合物であると考えられるため,陽イオン交換によるイオン液体化や,2価遷移金属との反応による[Mn3(L)Cl(solv.)2]-M(II)-[Mn3(L)Cl(solv.)2]の組成で表されるカプセル型ヘテロ金属錯体の合成への展開が期待できる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件)
Polyhedron
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
DOI:10.1016/j.poly.2017.03.043
Inorganica Chimica Acta
巻: 450 ページ: 225-231
DOI:10.1016/j.ica.2016.06.002
巻: 111 ページ: 32-37
DOI:10.1016/j.poly.2016.03.005