研究課題/領域番号 |
26410076
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
石田 斉 北里大学, 理学部, 准教授 (30203003)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 金属錯体化学 / CO2還元反応 / 光触媒 / ペプチド / 人工光合成 / ルテニウム |
研究実績の概要 |
近年、エネルギー・環境問題に関連して人工光合成への関心が高まっている。人工光合成系の一つの形として、酸化触媒・光増感剤・還元触媒を連結し、酸化反応で得た電子を用いて還元触媒反応を行うシステムが考えられている。しかしながら、このように複数の異なる系を分子レベルで自在に配列、接続することは容易ではなく、新しい設計ストラテジーや合成方法の開発が望まれている。 本研究では、ペプチド鎖が方向性を有することに着目し、金属配位性のビピリジン型非天然アミノ酸を組み込んだペプチドを利用することにより、光増感機能を有するルテニウムトリス(ビピリジン)型錯体と二酸化炭素還元触媒能を有するルテニウムモノ(ビピリジン)型錯体を接続した新規なペプチド連結ルテニウム二核錯体の合成を行う。さらにその光化学的二酸化炭素還元触媒反活性の検討を通して、触媒活性に効果的なペプチド配列の探索を行うことを計画している。 本研究の初年度にあたる平成26年度では、ペプチド合成に利用可能な光増感分子として、ルテニウムトリス(ビピリジン)型非天然アミノ酸の合成に成功した。このルテニウム錯体型非天然アミノ酸と、ビピリジン型非天然アミノ酸を含むペプチドを合成し、得られたペプチドのフリーのビピリジン配位子にルテニウム(カルボニル)原料を配位させることにより、光増感部位と触媒部位が連結したペプチド連結ルテニウムヘテロ二核錯体の合成法を確立した。さらに、得られた新規光増感-触媒二核錯体を用いた光化学的二酸化炭素還元触媒反応を検討し、それぞれの部位が結合していない混合系と比較したところ、連結系は混合系より活性が高くなることを確認するとともに、連結部位のペプチド鎖の種類によって活性が変化する、興味深い結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、初年度はペプチド連結二核錯体の合成方法の確立が達成目標であったが、かなり早い段階で合成法の確立に成功し、既にそれに基づいて数種類の異なるペプチド鎖で構成されるルテニウム二核錯体を合成した。さらにそれらを触媒として用いた光化学的CO2還元反応が、連結していない光増感錯体と触媒錯体の混合系に比較して、活性が向上するという結果を得ただけでなく、連結部位のペプチド鎖の違いにより活性がかなり異なるという、研究開始時に期待していた結果を得ることができている。このことから、研究計画以上に本研究は進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ペプチド連結ルテニウム二核錯体の合成方法が確立していることから、今後は、様々な異なる配列で連結した光触媒を合成し、その光化学的CO2還元反応を検討していく。特に、活性構造相関に関する情報を蓄積することにより、人工光合成に寄与し得る新規な光触媒開発を目指していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室にストックしていたペプチド合成関連試薬を有効利用することにより、物品費を抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は物品費(ペプチド合成関連試薬等、消耗品)が今年度より増えると見込まれることから、旅費を抑えることにより、対応する予定である。
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