研究実績の概要 |
【混合配位錯体の合成】今回銅(I)錯体については多くの新規錯体の合成に成功し、長寿命励起状態を有することを確認することができた。1つは[Cu(dmpp)(diphosphine)]2+型の錯体(dmppは2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナンスロリン)で、フェナンスロリンにフェニル基を2つ付与することで励起状態の寿命が大きく伸びることを見いだした(Dalton Trans., 2015, 7554)。また、ジホスフィンとして不斉配位として有名なDIOPを用いた錯体は極めて強発光性であることも見いだしている(Dalton Trans., 2015, 411)。さらにフッ素を含むジホスフィンを有する錯体は固体状態で180μ秒に及ぶ長寿命励起状態を有し、顕著な酸素依存発光を示すことが分かった((Dalton Trans., 2015, 9170)。銀錯体については複核カルベン錯体の合成を行った。 【光化学反応装置の整備】従来より使用している外部照射型高圧水銀灯装置に加え、今回楕円体ミラーを有する150Wキセノンランプ光源と小型(1/8m)分光器を購入したので、今後は必要に応じ分光照射の実験も行えるようになった。 【d10錯体と二酸化炭素の反応】計画では2014年度は錯体と二酸化炭素の反応性を吸収スペクトル変化から追跡するのみの実験を行う予定であったが、ジクロロメタン中光照射下で二酸化炭素存在下とそうでない場合と吸収スペクトルの変化にはあまり違いが見られなかったため、先行して錯体と二酸化炭素の光化学反応を行い、生成物を確認する実験も行った。犠牲還元剤存在下で、光増感剤としてのジイミンとジホスフィンを含む銅(I)錯体と触媒としてのニッケル(II)-シクラム錯体を溶解した溶液に二酸化炭素を通じ、可視光照射を行うことで、量は少ないものの一酸化炭素の発生を観測した。
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