研究課題/領域番号 |
26410078
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
勝又 哲裕 東海大学, 理学部, 教授 (90333020)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 強誘電体 / ペロフスカイト / 酸フッ化物 / 結晶構造 / 構造相転移 |
研究実績の概要 |
申請者は複合アニオン化合物の一つである(1-x)KNbO3-xKMgF3固溶体 (組成式で表すとK(Nb1-xMgx)O3-xFx)において、5mol%程度のフッ化物イオンのドープによって3点の相転移温度が1点に近づき、その誘電率が室温で40000もの巨大な値となることを見出した。この結果は複合アニオン化合物であるペロフスカイト型酸フッ化物が誘電体として応用できる可能性を示唆しており興味深い。そこで本研究では(1-x)KNbO3-xKMgF3の相転移挙動、誘電性についてさらに詳細な研究を進めた。 (1-x)KNbO3-xKMgF3固溶体は、xの増加に伴い構造のorthogonalityが小さくなり、立方晶構造に近づいていくため、研究室レベルの粉末X線回折では結晶構造、相転移挙動を明らかにすることができなかった。そこで、本研究では高輝度放射光を用いた高温粉末X線回折を行い、その相転移挙動を調べた。その結果、x=0.03付近までは急激に相転移温度が変化しているものの、x>=0.04では相転移温度がほとんど変化せず一定の温度となった。このことから、0.95KNbO3-0.05KMgF3は擬立方晶だと思われていたが、菱面体晶であることが明らかとなった。 また、0.95KNbO3-0.05KMgF3について、長時間酸素アニールを施すことで絶縁性を高め、誘電率の温度依存性について再測定を行い、電気機械結合定数、DEヒステリシスループについても測定した。その結果、0.95KNbO3-0.05KMgF3は、誘電率2000程度であり、400K付近に極大が見られること、電気機械結合定数、d33は約40程度であること、また室温で明確なDEヒステリシスループが見られたことから強誘電体である事等が明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はi)高絶縁性試料の作成 ii)作成した試料を用いた誘電特性の測定 iii)相転移挙動の解明 iv)フッ化物イオン分析手法の確立 を目標としてしてきた。上記のうち、i)についてはアニール条件を最適化することで達成し、ii)については、作成した試料を用いた誘電率測定、室温でのDEヒステリシスループの測定、圧電係数の測定が完了している。。iii)については、放射光を用いた高温粉末X線回折によって、x<=0.07の範囲で、その相転移挙動について明らかにしている。一方、iv)については、イオンクロマトグラフィーを利用した測定を計画していたが、試料溶解条件の探索が難航しており、研究が滞っている。しかしながら、i)~iii)までの目標についておおむね研究が完了していることから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
当初、0.95KNbO3-0.05KMgF3での40000もの高い誘電率は、3点の相転移温度が1点に収束し緩和型強誘電体となっていることが原因だと考えていた。しかし高輝度放射光を用いた高温粉末X線回折、DEヒステリシスループの結果から、0.95KNbO3-0.05KMgF3(x=0.05)は、緩和型強誘電体で見られる擬立方晶ではなく、菱面体晶であること、また高絶縁性試料を用い誘電率を再測定した結果、400K付近で約2000程度であることが明らかとなり、これらの事から、0.95KNbO3-0.05KMgF3は緩和型強誘電体ではないことがわかった。しかしながら、ここまでの研究から、KMgF3の固溶に伴い相転移点は1点に近づいていく傾向は明らかとなっているので、今後、さらにKMgF3量が多い固溶体を合成し、固溶体の相転移挙動を調べ、相図を完成させることで、(1-x)KNbO3-xKMgF3固溶体が緩和型強誘電体となるのかを明らかにしていく。 一方、(1-x)KNbO3-xKMgF3固溶体では緩和型強誘電体となる組成までKMgF3が固溶しないことも考えられるため、KMgF3と同じ立方晶ペロフスカイト型化合物である、KTiO2Fとの固溶体、(1-x)KNbO3-xKTiO2F固溶体の合成にも取り組み、(1-x)KNbO3-xKMgF3同様に、相転移挙動の解明、誘電性の測定に取り組み、フッ化物イオンドープが誘電性に与える影響について検討する。 また、(1-x)KNbO3-xKMgF3固溶体は5GPa程度の超高圧条件下で合成してきたが、x<=0.20程度までは、石英ガラス管に酸素発生剤とともに封入する簡便な方法で合成できる。そこで、0.98KNbO3-0.02KMgF3とBaTiO3との固溶体を石英ガラス管封入する簡便な方法で合成し、MPB領域の探索にも取り組む。
|