研究実績の概要 |
初年度として,Ag(I)-Ir(III)ヒドリド混合金属マクロサイクリック・配位高分子を合成する目的で,前駆体となる配位不飽和サイトを有する5種のIr(III)ヒドリド錯体の合成を試み,そのX線構造および性質を明らかにした。Ar雰囲気下CHCl3中,[Ir(H)2(PPh3)2(Me2CO)2]BF4と4-(2-ピリジル)ピリミジン (pprd)を反応させると[Ir(H)2(PPh3)2(pprd)]BF4・2CHCl3 (1)が得られた。錯体1はIr(III)イオンにpprdのキレート部位の2つのN原子,2つのPPh3,2つのヒドリドが配位した歪んだ正八面体構造を有する単核Ir(III)ヒドリド錯体であり,配位したpprdは1つの配位不飽和な橋かけ部位を有している。同様に[Ir(H)2(PPh3)2(Me2CO)2]Xと6,6'-ジメチル-4,4'-ビピリミジン (Me2bpm)および4,4'-ビキナゾリン (biqz)を反応させると[Ir(H)2(PPh3)2(Me2bpm)]X (X=BF4 (2), PF6 (3))および[Ir(H)2(PPh3)2(biqz)]X (X=BF4 (4), PF6 (5))が得られた。錯体2-5はIr(III)イオンにMe2bpmあるいはbiqzのキレート部位の2つのN原子,2つのPPh3,2つのヒドリドが配位した歪んだ正八面体構造を有する単核Ir(III)ヒドリド錯体であり,配位不飽和な2つの橋かけ部位を有している。錯体1-5はいずれも2170cm-1付近にヒドリドに特徴的な赤外吸収帯を与え,また-20ppmに2種のヒドリドに特徴的な1H NMRシグナルと,環電流効果により遊離の配位子に比べ高磁場側シフトした1H NMRシグナルを与えた。またTG-DTA測定より,これらの錯体1-5は200℃付近まで熱的に安定であることがわかった。 次年度,これら錯体1-5とAg(I)イオンを反応させ,Ag(I)-Ir(III)ヒドリド混合金属マクロサイクリック・配位高分子の合成を試みる。
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