研究実績の概要 |
本研究では、強誘電発現部位として結晶内で分子回転可能な超分子カチオンを、キノン誘導体配位子から形成され、強磁性発現が可能な[MIIMIII(C6O4X22-)3]-型多孔性キラル金属錯体に導入し、新たな分子性マルチフェロイクス材料構築することを目的とする。超分子カチオンローターと[MIIMIII(C6O4X22-)3]-型金属錯体を組み合わせた塩の、強磁性と強誘電性の相関を検討し、分子性マルチフェロイクス材料への展開可能性を探索することを目指す。 研究初年度である本年度は、交付申請書記載の通り化合物合成を主に行った。超分子カチオンローターの構築は、m-fluoroanilinium+、4-aminopyridinium+、3-aminopyridinium+、3-fluoro-4-methylanilinium+、pyrizinium+などの各有機カチオンと、クラウンエーテル誘導体の組合せを試みた。アニオン側の作成は用いるキノン誘導体の置換基により強磁性転移温度の変化が現れる可能性が高いことから、dihydroxybenzoquinone, chroranil, bromanil, iodanilの4つの配位子に着目した。金属イオンは最も強磁性が発現する可能性が高いマンガンII価、クロムIII価カチオンを導入した。これら種々の超分子カチオンと強磁性アニオンの組合せで結晶化を試み、構造決定には至っていないものの、15種類の化合物について磁性や誘電率の測定が可能な微小結晶を得ることに成功している。 次年度の研究計画で予定されている物性評価に繋がる結果が得られており、研究の進捗状況は概ね良好といえる。
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