研究課題/領域番号 |
26410083
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
久保 和也 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (90391937)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マルチフェロイクス材料 / 分子性結晶 / 機能性材料 / 超分子構造 / 強磁性体 / 強誘電体 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
本研究は、新たな分子性マルチフェロイクス材料構築を行うことを目的とする。強誘電発現部位として結晶内で分子回転可能な超分子カチオンを、強磁性発現部位にはキノン誘導体配位子から形成される多孔性キラル金属錯体を用いて結晶作成を行い、強誘電性発現のため結晶の対称性制御と物性発現を同時に実現する計の構築を目指した。本年度は主に、昨年度報告した15種類の超分子カチオン・多孔性キラル金属錯体結晶の構造解析並びに物性測定を試みた。その結果、研究を推進する上で問題となる、いくつかの課題が明確になってきた。 (1)単結晶は得られるが、極めて微少な結晶しか得られない。本研究で用いた超分子カチオンローターは、アニリニウム誘導体とクラウンエーテル誘導体が水素結合を介して形成している比較的大きなカチオンである。本研究では、このような大きなカチオンが結晶内で存在できるような空隙を持つ金属錯体を選択して合成に望んでいるが、予想以上に、カチオンと空隙のサイズが結晶性に影響しているように考えられる。現状、単結晶X線構造解析で、反射は見える程度の単結晶は得られているが、構造決定には至っていない。得られた結晶は0.1mm角程度の微小結晶なので、誘電率測定用の端子も結線できず、測定には至っていない。 (2)収率が極端に悪い。上述の結晶性とも関連するが、単結晶X線構造解析や誘電率および、磁化率測定に用いることができる程度の質をもつ単結晶の収率が極めて悪い。 (3)多形が存在する可能性がある。顕微鏡下における目視でしか確認できていないが、明らかに形の異なる結晶が複数生成していた。この問題は、磁化率測定には極めて悪影響を及ぼすため、目視で結晶を分けるなど、慎重な対応をせざる得ない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の通り、研究を進めていくうえでの課題を明確に把握することができた。しかし、当初目的としていた、単結晶X線構造解析による結晶内における分子配列ならびに絶対構造の決定や、誘電並びに磁気挙動の検討が、思うように進んでいない状況があり、やや遅れいているとの評価とした。ただし、化合物が全く合成できていない状態ではないため、課題を解決する方法を模索することにより、今後の進展には、期待が持てる結果である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を推進していくためには、単結晶のサイズを大きくすることが一番重要である。類似の単結晶を作成しているスペインのグループから、この種の結晶は、結晶化に極端に時間がかかるため、結晶成長期間を数ヶ月から半年くらい見る必要があるとの助言をもらったので、今後の結晶作成をより長い期間で行うことを検討する。これに併せて、超分子カチオンと金属錯体の組み合わせ、溶液濃度、結晶成長温度などの検討を詳細に行うことは当然行うべきことである。 ただし、結晶成長期間が長くなると、万が一、期待した結晶が得られなかった場合、研究全体の進捗に極めて悪影響が出る。現在、金属錯体側の中心金属にはマンガンとクロムのイオンを用い、それらが交互に配列した構造の構築を目指している。この結晶はは基本的に原料をヨウ化しいた溶液の拡散法により行っている。この拡散時間を長くとる方針をとるが、それだけでは上述のように研究の進捗に悪影響が出る可能性もある。そこで、全く異なる合成法からえられる鉄の多孔性金属錯体を合成し、それらに超分子カチオンを導入した単結晶の構築も同時に進めていく。キノン誘導体を配位子とする鉄の多孔性金属錯体も、強磁性を発現する可能性が高い化合物であるため、本研究の目的と合致する化合物である。 最終年度は、このような新たな手法を積極的に導入し、研究の進めていきたい。
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