研究実績の概要 |
本研究では、強誘電発現部位として結晶内で分子回転可能な超分子カチオンを、強磁性発現が可能な[M(II)M(III)(2,5-Dihydroxy-p-quinone derivatives)3]-型多孔性キラル金属錯体に導入し、新たな分子性マルチフェロイクス材料構築することを目的とした。マルチフェロイクス材料の開発は、無機物を中心に進められているが、高圧・高温合成が必要になるなど材料開発を進める上で不利な点も多い。本研究で用いる超分子化合物や金属錯体などの分子性物質は、多様な合成法により様々な物質を合成できる利点がある。さらに合成の観点から機能性発現を制御する方法を見いだすことができる点も、物質開発に置いて重要な知見をえる方法として注目すべき点である。 このような目的を達成するために、様々な置換基を導入したアニリニウム/クラウンエーテル誘導体から構築される超分子カチオンを合成し、2,5-Dihydroxy-p-quinoneのハロゲン二置換体で架橋された、マンガン・クロム・鉄を含有する多孔性金属錯体への導入ならびに結晶化を試みたところ、6種類の超分子カチオン/多孔性強磁性錯体複合体微小結晶の作製に成功した。現在のところ物性測定に必要なサイズの結晶が得られておらず、嫌気下水熱合成等を用いた合成手法を検討し、物性測定に向けた結晶作成を続けているところである。 また、比較対象として合成した、超分子カチオン/[Mn(II)Cr(III)(oxalate)3]-型金属錯体複合体については(anilinium)(benzo[18]crown-6)[Mn(II)Cr(III)(oxalate)3]-複合結晶に置いて、大きな誘電応答と強磁性が共存することが明らかとなり、分光学的手法から強磁性発現に必要な対称心の消滅も確認できたことから、詳細を解明するため研究を進めている。
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