研究課題/領域番号 |
26410084
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
帯刀 陽子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30435763)
|
研究分担者 |
岡田 修司 山形大学, 理工学研究科, 教授 (30250848)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ナノコイル / 分子集合体 / 電荷移動錯体 / ナノデバイス |
研究実績の概要 |
1次元ナノマテリアルは、分子エレクトロニクス実現のためのパーツとしてその開発に注目が寄せられ、デバイス応用に向けての研究が国内外で活発に行われている。一方、分子性導体は金属に至る伝導物性を示すことが知られており、エレクトロニクス等への応用を可能にするために、分子性導体の1次元組織体への材料化、デバイス化が強く望まれている。本研究では、特異な機能を発現する分子を操作することで、分子エレクトロニクスデバイスを開発する。具体的には、導電性を有する有機導体を用いた分子性電磁ナノコイルの開発を目指す。申請者の「有機合成を基盤とした導電性ナノワイヤの研究」は一定の成果をあげており、電荷移動錯体からなる分子集合体を作製することにも成功している。 研究計画を以下2項に大別する。 ①新規有機導電性分子の合成と分子性電磁ナノコイルの構築 高導電性を示す様々な有機導電性分子に、「キラル分子」と「水素結合部位」を付与することで新規誘導体を合成する。これらの誘導体を自己組織化させることで1次元ナノコイル構造を作成する。 ②分子性電磁ナノコイルの電気・磁気物性評価 ①で作製したナノコイル1本の電気伝導度を、導電性AFMを用いて評価する。ナノコイルは電磁コイルとして機能することから、微小磁場発生の有無についてもMicro-SQUIDを用いて評価する。分子性電磁コイルの物性・機能変化を利用し、新規エレクトロニクスナノデバイスを作成する。本系は、有機導電性分子が自己組織化することでコイル構造を形成し、更に磁場存在下で電流が発生することから、ナノシステムにおけるパワーソースになると期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高導電性を示す様々な有機導電性分子に、「キラル分子」と「水素結合部位」を付与することで新規誘導体を合成する計画であった。分子合成後、これらの誘導体を自己組織化させることで1次元ナノコイル構造を作成する予定である。しかしながら、現段階では、1種類の有機導電性分子に「キラル分子」と「水素結合部位」を付与することに成功しているが、その他の有機導電性分子の合成は最終段階まで至っていない。両親媒性の分子性導体としては、TTF、BEDO-TTF、 [M(dmit)2] (M=Ni, Au)、フタロシアニンを用いる予定であるが、現段階ではTTF分子合成が完了し、[M(dmit)2] (M=Ni, Au)、フタロシアニンの合成については中間物質の合成まで進んでいる。キラル部位としてはフェニルエチルアミン、コレステロール、ボルネオールを導入予定であるが、現在はフェニルエチルアミンを用いて合成を進めている。側鎖末端には、外場応答性部位としてフェロセンを導入したが、この部分の合成法が確立していないため収率が低いという問題を有している。
|
今後の研究の推進方策 |
新規誘導体の合成が終了していない分子については、継続して合成を行う。次年度は、物性測定を中心に研究を進める。 1. 導電性AFMを用いて、分子性ナノコイルの電気物性評価を行なう。 1-1. 具体的には、微小電極基板上にナノコイルを作製し電気物性評価を行った後、導電性AFMを用いて測定する。電気伝導度は2端子法を用いて行い、温度を変化させながら極低温まで測定し(~300 mK)、温度依存性から導電挙動の機序を探る(Proc. Natl. Acad.Sci. U.S.A. 2002, 99, 5028)。 2. 分子性ナノコイル1本の電気物性評価には、導電性AFMを用いる(Adv. Mater., 2006, 18, 1411)。AFM測定により構造を明確にしたナノワイヤに導電性のAFM探針を接触させ、電気伝導度の測定を行う。基板表面の吸着水の影響を防ぐために、真空下での測定についての検討を行い、室温から液体窒素までの領域で測定を試みる。螺旋構造の始点には金電極を蒸着し、終点部分に探針を接触させ、電気伝導度を測定する。更に、直線構造と螺旋構造の電気伝導度を比較し、導電性ナノワイヤの伝導度形状依存性について明らかにする。 3. 更なる発展として、分子性ナノコイルの磁気特性をMicro -SQUIDを用いて測定する。初めに、螺旋構造を有する組織体の磁化率を、バルクの状態で測定する。次に、Micro -SQUID素子の「微小電流も精密に測定できる」という特性を利用して、素子上にナノコイルを作製する。電流を印加することで発生する磁場を検知し、電磁コイル機能の有無を確認する。分子性ナノコイルの累積は、Micro-SQUID素子上にキャストすることで行う。他方からのアプローチとして、インピーダンス測定からも分子性コイルとしての性能を追求する。
|