最終年度はアルキル側鎖を導入しない経路でのチエノイソインジゴ骨格の新規な合成手法を検討し、窒素原子上に水素原子を残したチエノイソインジゴ骨格のグラムスケールでの大量合成法を確立した。この手法はチエノイソインジゴ骨格に様々な側鎖を簡便に導入できる点で、汎用性がある。チエノイソインジゴ誘導体合成に水素原子を残したことで、分子間に水素結合を介したネットワーク構造が構築でき、この骨格を用いたトランジスタはホール輸送及び電子輸送のバランスの良いアンバイポーラ特性(>0.1cm2/Vs)を示した。 本研究課題では、狭いエネルギーギャップを持ち、近赤外領域超える長波長領域に吸収を示すホール輸送性のチエノイソインジゴポリマーを開発した。そこでチエノイソインジゴ骨格の持つオリゴマー及びポリマー分子を開発することで、チエノイソインジゴ骨格に特徴的な電子物性が、キノイド構造に由来することを明らかにした。さらにチエノイソインジゴ骨格のパイ電子系を拡張した新規な骨格を開発し、結晶構造と良好なホール輸送特性(>0.1cm2/Vs)の相関を明らかにした。 この他に、キノイド構造の示す長波長吸収特性に着目して、新規な電子受容性骨格であるキノキサリンイミド骨格を開発した。この骨格をベースにした電子輸送性のポリマーを開発した。近赤外領域に吸収を示すチエノイソインジゴポリマー及びキノキサリンイミド系ポリマーを用いて、近赤外光から熱を介して起電力を出力する光熱電変換素子の作製に成功し、その成果を第65回高分子討論会(2016年9月5日)においてプレスリリースを行った。
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