研究課題/領域番号 |
26410088
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
生駒 忠昭 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10212804)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子スピン角運動量保存 / 磁気伝導効果 / 有機太陽電池 / キャリア動力学 / 電荷再結合 / 一重項解裂 / トラップ反応 |
研究実績の概要 |
元素戦略に合致したグリーンイノベーションが求められる近年、有機太陽電池は安価で低環境負荷型の再生可能エネルギー利用素子として注目されている。有機太陽電池の高性能化とって、ナノ空間における光キャリ反応の制御は中心的命題である。抑制法開発のためには、素子におけるキャリア反応の“その場観測”が重要であるが、複雑な積層構造をもつ素子で起こる動力学を調べる有力な測定手段がない。本研究では、エネルギー・電子移動反応におけるスピン角運動量保存則に基づいた新しいキャリア観測法を開発し、有機太陽電池のキャリア動力学を明らかにすることを目的にしている。
1.ペンタセン/C60のp/n接合(PNJ)太陽電池(図4D参照)を対象に、ソースメータと電磁石を用いて素子特性に対する高磁場実験を行い、三重項-二重項(TD)対機構を明らかにする。 2.バルクヘテロ接合太陽電池における標準試料ポリチオフェン(P3HT)/フラーレン誘導体(PCBM)混合系について、PNJと同様な実験を行い、磁気伝導(MC)効果の一般性を明らかにする。MC効果のP3HT/PCBM混合比依存性を調べることで、素子特性を支配している素過程ダイナミクスとMC効果の関係を明らかにする。 3.外場を取り入れた拡散方程式(現象論的方程式)およびLiouville方程式(量子論的方程式)を用いて、ナノ空間における電荷およびスピン動力学のモデル計算を行う。実験結果と理論計算を比較することで、定量的評価法を確立する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的どおり、磁気伝導効果と接合構造の関係の解明を目的に、P3HTおよびPCBMを用いたシングル接合太陽電池とバルク接合太陽電池を用いて、暗状態および明状態の磁気伝導効果を総合的に研究することができた。 今回用いた太陽電池の磁気伝導効果には、三種類の磁気伝導効果が観測され、その寄与の割合は接合構造だけなく暗・明の計測条件にも依存することを初めて明らかにすることができた。また、観測されたすべての磁気伝導効果は接合領域に存在する非ジェミネート電子正孔対のスピン選択的な再結合に由来した効果であることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、バルク接合太陽電池の非ジェミネート再結合効率がシングル接合太陽電池に比べて高いことが分かったが、今後はより定量的議論をする必要がある。そのために、磁気インピーダンス分光の開発と理論計算との比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の使用量を節約できたので、27,089円を平成28年度へ繰越をした。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品購入に使用する。
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