研究実績の概要 |
本年度は、前年度に見出したコバルト触媒を用いた高位置選択的ヒドロシリル化反応を基に、液晶物性に及ぼす置換基効果を調査する目的で、各種アリール基を持った液晶候補化合物を構築すべく、そのヒドロシリル化反応に及ぼす置換基効果を精査した。その結果、4位に電子求引基を持つアリール置換基や立体障害の大きい置換基の場合、ヒドロシリル化反応がスムーズに進行せず、触媒量の増量や反応時間の延長が必要であった。強い電子求引基を持つアリール基の場合では、いずれの反応条件下でもヒドロシリル化反応がほとんど進行しなかった。 上記液晶候補化合物の合成に加え、さらなる効率的合成法を確立すべく、新たな合成手法の開発にも取り組んだ。まず、2,3,5,6-テトラフルオロフェノールを酸化的処理することで、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ベンゾキノンを合成し、これとシクロペンタジエンを作用させることで、Diels-Alder生成物を得た。このDiels-Alder生成物を還元することで、ジフルオロシクロヘキサン骨格が構築できるわけだが、還元法として、亜鉛を用いた金属溶融還元を行うと、炭素―フッ素結合の切断が進行し、フッ素原子を持たない未確認生成物が得られた。現在、この還元方法を模索中である。一方、p-ベンゾキノンとシクロペンタジエンから調製されるDiels-Alder生成物を金属溶融還元によって1,4-シクロヘキサンジオン誘導体へと導き、これをLHMDS/TMSClによってビスシロキシジエンへと誘導した。このビスシロキシジエンのフッ素化反応を試みたところ、目的生成物のvic-ジフルオロ化されたと思われる生成物が、19F NMRによって少量確認できた。現在、このフッ素化反応の収率向上を目指し、反応条件の精査を行っている。
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