研究課題/領域番号 |
26410094
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
湯浅 順平 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (00508054)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光化学 / 超分子化学 / ミスマッチDNA / カルバゾール / 分子間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究は非相補塩基対を用いたナノ微粒子の合成と位置制御を行っている。その目的はミスマッチDNAをテンプレートに利用してこれまで未踏領域であった0.5~数10nmの距離で分子をプログラミング配列する技術を確立することであり、そのため以下に示す研究項目に関して研究を進めている。 1. DNAの二重らせん内のミスマッチ箇所はDNAの自動合成によって人為的にプログラミングすること。 2. このプログラミング配列を利用して金属ナノ粒子の精密プログラミング配列。また具体的な項目としては研究計画① ミスマッチDNAの合成、研究計画② 錯体のプログラミング、研究計画③ ナノ粒子の担持 研究計画④基盤への固定化、研究計画⑤ 加熱処理、有機物の除去、研究計画⑥ カーボンナノチューブの生成の6つに分類される。本年度はこのうち、研究計画②錯体のプログラミングについて重点的に研究を行った。具体的にはDNAの2重らせんにインタカレーションすることが可能なπ電子系平面分子、カルバゾールを錯体化しDNAの2重らせんにメタルインサーションできる分子設計を施した。分子設計としてはカルバゾールの3、6位に回転自由度の高い三重結合を介して、金属イオンとの結合部位であるイミダゾール配位子を導入した。三重結合を導入する手法としては薗頭カップリングを利用した。さらにカルバゾール環の窒素部位にクライゼン縮合反応ジケトナート配位子を導入することで合計3箇所の結合部位を有する新規配位子を合成した。このカルバゾール配位子は亜鉛イオンと相互作用することで超分子を形成し、亜鉛イオン濃度に応答して2つのカルバゾール環の間にππ相互作用が形成することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は申請書の内容に則して順調に進められている。実際に、研究計画② 錯体のプログラミングに関してはほぼその目標が達成されており、この段階で既に論文として報告している(Chem. Commun. 2015.また本論文は同誌のバックカバーにも選出されており (back cover in Chem. Commun.)当該分野において大きなインパクトを与えることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
上述のようにDNAの2重らせんにインタカレーションすることが可能なπ電子系平面分子、カルバゾールを錯体化しDNAの2重らせんにメタルインサーションできる分子設計を施した。今後はこの新規錯体に水溶性を付与することでDNAの2重らせんにメタルインサーションを行う。水溶性を付与する方法としては、合成上の簡便さから、グリコール酸部位をカルバゾール配位子に導入する。グリコール酸は強い溶液中において2分子間に立体障害を与えることから、π電子系の平面性分子に対して高い水溶性を与えることが期待される。またその他の研究項目、研究計画① ミスマッチDNAの合成、研究計画③ ナノ粒子の担持 研究計画④基盤への固定化、研究計画⑤ 加熱処理、有機物の除去、研究計画⑥ カーボンナノチューブの生成にいついても随時研究を進展させていく予定であるが、研究計画の2に関しては既に論文として報告しており(Chem. Commun. 2015. (back cover in Chem. Commun.) )その他の項目に関しても、報告可能なデータが集まり次第積極的な論文報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
納入業者との価格交渉等により、当初予想していた額より安く物品を仕入れることができた。その結果、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に持ち越した予算を有機合成に必要な試薬やガラス器具類など、主として消耗品の取得に使用する。これにより研究を効率よく進展させる予定である。
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