研究課題/領域番号 |
26410095
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
白旗 崇 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (40360565)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子供与体 / 分子性導体 / 超分子化学 / 双極子相互作用 / ハロゲン結合 |
研究実績の概要 |
本研究では、新しい含フッ素テトラチアフルバレン(TTF)系電子供与体を開発し、導電性をもつ機能性材料への応用研究を進めている。平成27年度は、すでに合成済の「フルオロアリール基を有するTTF系電子供与体」を配位子として用いた金錯体の合成研究を行った。既報のテトラブチルアンモニウムビス(ペンタフルオロフェニル)金(I)の合成方法を参考にして合成を検討した。テトラフルオロフェニル部位をもつTTF誘導体に対して、各種塩基を作用させカルボアニオンを発生させた後、AuCl(THT)を作用させたが、目的の錯体は得られなかった。この研究過程における予備実験で得られたビス(ペンタフルオロフェニル)金(I) [Au(C6F5)2]を陰イオンとする新しい分子性導体の開発を検討した。二分子のTTFが融合したBDT-TTPを電子供与体とする[Au(C6F5)2]塩の組成比はD:X = 4:3である。結晶構造解析の結果、BDT-TTP分子が一次元カラムを形成し、その周りを[Au(C6F5)2]陰イオンが取り囲んだ構造をとっている。一方、TTFにジチオール環が縮環したMeDTETを電子供与体とする[Au(C6F5)2]塩の組成はD:X = 4:1であり、MeDTET分子はλ型に類似した分子配列をとっている。(BDT-TTP)4[Au(C6F5)2]3は室温から半導体的な振る舞いを示したが、(MeDTET)4[Au(C6F5)2]は室温近傍で金属的な性質を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フルオロアリール基を有するTTF誘導体を用いた錯体合成に関しては、合成方法の見直しが必要であり、別ルート合成を検討するための予備的な実験を進めている。一方、前述の研究から派生したフルオロフェニル基をもつ有機金属陰イオンを対イオンとする新しい分子性性導体を開発した。フルオロアリール金錯体を陰イオンとする分子性導体は半導体的な物質しか報告されていなかったが、本研究において金属的な振る舞いをしめす物質の開発に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に得られた知見に基づいて、TTF部位をもつ有機金属錯体の合成研究を進めていく。また、トリフルオロメチル基を導入したBDT-TTP系電子供与体を合成する。トリフルオロメチル基が置換した側のTTF部位には正電荷が偏在しにくくなるため、BDT-TTP骨格内に電荷の偏りが生じることが期待される。この分子内電荷不均化を利用した新規分子性導体の開発にも取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査研究のため分子科学研究所に出張をしたが、旅費が先方負担であったため、旅費の支出がなかったことが理由として挙げられる。また、研究補佐員の適任者が不在のため、謝金が発生しなかったことも要因の一つである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度はTTF部位をもつ有機金属錯体の合成を進めていく。主に金錯体を中心に進めるため原料となる薬品類に多くの経費を支出する予定である。新たに含フッ素電子供与体の合成も進めるため、特殊なガラス器具等の購入にも当該経費を充当する予定である。また、これまでに得られた結果を報告するための学会参加にかかる経費、論文投稿(英文校閲など)に支出する。
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