研究課題/領域番号 |
26410096
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岡村 浩昭 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (30244221)
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研究分担者 |
蔵脇 淳一 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (10170078)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 金ナノ粒子 / 銀ナノ粒子 / 有機-無機複合材料 |
研究実績の概要 |
H26年度の計画は、複数種類の両親媒性チオール誘導体の合成と、これを用いた金および銀ナノ粒子の調製、さらに、複数のチオール誘導体の混合物を利用して調製した金および銀ナノ粒子の物性測定である。 当初計画したチオール誘導体の合成研究の途上、目的化合物の構造異性体であるスルファニルアニリン誘導体が主生成物として得られることを見いだした。この化合物は、塩化金酸溶液または硝酸銀溶液と混合することで、安定な金および銀ナノ粒子が得られることを確認した。スルファニルアニリン誘導体は、予定されていたチオール誘導体よりも簡便かつ高収率で得られることから、この化合物を利用してナノ粒子の調製およびその物性測定を行った。 現在までのところ、中性およびアニオン性の両親媒性スルファニルアニリン誘導体6種類を合成した。いずれも、塩化金酸溶液または硝酸銀溶液と混合することで、粒子表面にスルファニルアニリン誘導体が固定化された安定な金および銀ナノ粒子溶液を与えた。ナノ粒子生成の反応速度は、中性の誘導体では早く、室温下、数時間以内にナノ粒子に由来する吸光スペクトルを確認することができたが、アニオン性誘導体では遅く、同様の条件で数日から2週間程度の時間を要した。ナノ粒子表面に固定化されたスルファニルアニリン誘導体は、1H NMRスペクトルなどの分光学的手法で観測し、アニリン部位によって粒子上に固定化されていると結論した。 続いて、複数の両親媒性スルファニルアニリン誘導体の混合物を用いてナノ粒子の調製を検討した。中性の誘導体とアニオン性の誘導体との混合物では、中性の誘導体のみが粒子上に固定化された。これは、反応速度の大きな差によるものと考えられる。 ナノ粒子上に固定化する機能性分子についても、合成の検討を行った。すでにアミノ糖およびカルバ糖の合成法を確立しており、現在、その効率化を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
*チオール誘導体の合成について:当初計画したチオール誘導体よりも簡便に合成できるスルファニルアニリン誘導体が利用可能であることがわかった。これは今後の研究を進める上で大きな利点となる。 *ナノ粒子の生成について:当初計画通り、スルファニルアニリン誘導体と塩化金酸溶液もしくは硝酸銀溶液との混合物から、安定なナノ粒子を得る方法を確立することができた。スルファニルアニリン誘導体とナノ粒子との相互作用に関する知見は、得られたナノ粒子の1H NMRスペクトルから得られることを確認した。両親媒性スルファニルアニリン誘導体の電気的な特性(中性か、アニオン性か)がナノ粒子生成の反応速度に大きな影響を与えていることを明らかにした。これは、ナノ粒子生成の反応機構を考える上で興味深い知見である。 *混合ミセルを利用したナノ粒子の調製について:現在のところ、複数のスルファニルアニリン誘導体を固定化した金ナノ粒子または銀ナノ粒子は得られていない。当初計画よりも遅れているが、解決すべき問題は明らかになっており、次年度も継続して検討を行う。 以上の達成度より、研究全体はおおむね順調に進展しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
優先すべき研究課題は、複数のスルファニルアニリン誘導体を固定化したナノ粒子の調製法の確立である。電気的な特性が類似しているが、1H NMRスペクトルで明確に差異を見いだすことのできる構造的特徴を持った複数のスルファニルアニリン誘導体を合成し、これらを用いたナノ粒子の調製を検討する。これによって、複数のスルファニルアニリン誘導体を固定化したナノ粒子の一般的な調製法を確立する。 この検討と並行して、末端に蛍光性の部位を持ったスルファニルアニリン誘導体の合成を行う。合成完了次第、これを用いたナノ粒子の調製を行い、得られた粒子の光学的特徴を確認する。 これらの検討を行った後に、異なった蛍光性部位を持ったスルファニルアニリン誘導体の混合物からナノ粒子調製を行い、蛍光性部位間の相互作用を確認する方法について検討する。
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