H28年度は、昨年度の研究から得られた知見をもとに、複数の機能性分子で表面修飾された安定な金ナノ粒子もしくは銀ナノ粒子を得るための条件検討を行った。 電荷を持たない中性の両親媒性スルファニルアニリン誘導体で表面修飾した金ナノ粒子の安定性は、スルファニルアニリン誘導体の炭素鎖長に大きく依存する。安定なナノ粒子溶液を得るためには、6炭素以上の鎖長を持つアルキルスルファニルアニリン誘導体を用いる必要があることを確認した。一方、アニオン性置換基を末端に有するアルキルスルファニルアニリン誘導体で修飾した金ナノ粒子の安定性は、中性のものよりも高いが、炭素鎖長が短いと安定性は低くなる。この傾向は、銀ナノ粒子についても同様であった。 以上の結果を踏まえて、6炭素以上の鎖長を持つアニオン性スルファニルアニリン誘導体と中性のスルファニルアニリン誘導体とからなる金ナノ粒子の調製を検討した。具体的には、末端にスルホ基を有するスルファニルアニリン誘導体溶液中に、末端にグルコースを結合したスルファニルアニリン誘導体を1~10%加え、塩化金酸との反応を行った。その結果、2種類の誘導体で表面修飾された安定な金ナノ粒子溶液を得ることに成功した。得られたナノ粒子溶液は精製操作の後、核磁気共鳴スペクトルによって表面修飾された2種類の分子に由来するシグナルを確認した。 銀ナノ粒子についても同様の実験を行ったが、現在までのところ表面修飾された分子についての分光学的な確認はできていない。 蛍光性と生物活性を併せ持つ表面修飾剤として、リグナン骨格を持つ修飾剤の合成を検討し、新しいリグナンラクトン誘導体の合成を行った。
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