研究課題/領域番号 |
26410097
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
豊玉 彰子 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (50453072)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コロイド結晶 / 荷電コロイド / 結晶成長 / 不純物排除 / その場観察 |
研究実績の概要 |
結晶格子の格子欠陥は、融点や電気伝導など結晶のマクロな材料特性に大きな影響を与えるため、欠陥の制御は重要である。不純物の混入によっても結晶欠陥が生じる。不純物を除去する際、結晶内部での拡散には長時間を要するため、拡散が生じやすい結晶/融液界面での不純物排除(再結晶化、ゾーンメルト等)が利用される。排除機構のモデルが提案されているが、直接観察による実証は行われていない。一方、荷電コロイド粒子が水媒体中で静電反発力により形成する「コロイド結晶」は、一粒子がその場・実時間観察可能で、結晶構造および結晶欠陥研究のモデル系となる。そこで、不純物粒子を添加したコロイド系の結晶/融液界面を光学顕微鏡観察し、不純物排除の素過程における粒子の運動を明らかにすることを目的として、本研究を行った。 本年度は、(1) マクロな不純物排除条件の決定、(2) 一粒子観察による結晶化を伴う不純物排除様式の解明を行うために以下の検討を行った。 一粒子観察可能なサイズの、不純物粒子および結晶格子の構成粒子を用いた。コロイド結晶格子構造を形成する粒子として、市販の粒径200~600nm前後のポリスチレン粒子を、また不純物粒子として粒径200~500nm のポリスチレン粒子(共にThermo社)を用いた。粒子は透析・イオン交換法により精製し、電気伝導度法、ゼータ電位法により粒子表面電荷数を決定した。また、動的光散乱法により粒径を測定した。コロイド結晶/融液界面の不純物粒子と周辺粒子に注目して一粒子観察を行い、不純物排除機構と結晶成長の観察を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各課題項目に関する達成度は次の通りである。 試料精製・キャラクタリゼーション:コロイド結晶格子を形成する粒子として、市販の粒径500nm前後のポリスチレン粒子を、また不純物粒子として粒径300~600nm のポリスチレン粒子(共にThermo社)を用いた。粒子は透析・イオン交換法により精製し、電気伝導度法、ゼータ電位法により粒子表面電荷数を決定した。また、動的光散乱法により粒径を測定した。しかし、次項に記載した通り、観察しやすい大きさのコロイド粒子は不純物イオンに対して、非常に敏感であり、目的とする構造が形成されない場合がある。このため、さらに様々なサイズの粒子を検討するため、今後も引き続き試料精製およびキャラクタリゼーションを行う必要がある。 結晶化検討:コロイド結晶化の駆動力である静電反発力は、粒子濃度、系のイオン濃度によって調節できる。結晶化相図を粒子濃度、塩濃度の関数として決定している。粒径が大きくなると結晶構造が観察できる塩濃度が限定されるが、不純物を添加することでさらに結晶化領域が小さくなった。結晶内の不純物粒子の運動を記録し、解析を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度は、引き続き課題(1),(2)を系統的に検討する。また、不純物排除を伴う結晶化の素過程を明らかにすることで、課題(1)で得られるマクロな不純物排除とミクロな拡散素過程(課題(2))の対応を検討する。 結晶内部において不純物拡散は、粒子が一定間隔で隣り合う離散的な安定位置を、ランダムにジャンプすることで生じる。これに対して結晶化/融液界面における不純物は、結晶格子による拘束の程度が結晶内部と比較してはるかに小さいため、拡散が生じ易く(表面拡散)、不純物排除が容易であると考えられる。 観察は光学顕微鏡および共焦点レーザースキャン顕微鏡による直接観察のほか、ファイバー型分光器などにより、結晶構造に起因する回折ピークの半値幅などの光学的性質の評価も利用する。 また、結晶化に伴う不純物排除が観察できた系については、順次、結晶内の不純物粒子分布の時間変化に対して、拡散方程式を用いてモデル計算を行いマクロな拡散定数を決定する。さらに本年度から結晶化していない試料について、不純物の分布を決定する。具体的には、平衡状態で相分離状態もしくはランダム分布のいずれを示すか、また相分離構造であればその動的過程を、観察する。
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