結晶の格子欠陥は、融点や電気伝導など結晶の材料特性に大きな影響を与えるため、 結晶の格子欠陥は、融点や電気伝導など結晶の材料特性に大きな影響を与えるため、欠陥制御は重要である。結晶欠陥は不純物が混入したときに生じる。不純物を除去する際、 結晶内部での物質拡散は長時間を要するため、拡散が生じやすい結晶/融液界面を利用した不純物排除(再結晶化、ゾーンメルト等)が利用される。これまでに様々な排除機構のモデルが提案されているが、直接観察による実証は行われていない。一方、荷電コロイド粒子が水媒体中で静電反発力により形成する「コロイド結晶」は、一粒子がその場・実時間観察可能であり、結晶のモデル系となる。本研究では、不純物粒子を添加したコロイド系の結晶/融液界面を光学顕微鏡観察し、不純物排除の素過程における粒子の運動を明らかにした。 本年度は、酸化チタン・金コロイド結晶における不純物排除の検討を計画していたが、実際の検討は、特に輝度の大きい金コロイド粒子について行なった。金コロイド粒子からなる結晶構造は、プラズモニック材料として期待されている。しかし、金コロイド粒子間には、大きなvan der Waals(vdW)引力が働くので、昨年度まで検討した界面活性剤による電荷の付与だけでは、荷電コロイド結晶が形成できる濃度まで濃縮したときに、凝集が観察されることもあった。そこで、適量の電荷を粒子表面に導入することを試みた。チオール基が金表面に特異的に良く吸着することを利用した。これにより金粒子表面のゼータ電位の絶対値を大きく増加させる事に成功した。本粒子を使うことで、安定な結晶構造を形成することができた。また、これまで結晶構造は壁付近の観察を行なっていたが、壁の形状の影響なども検討した。 本研究の成果は、結晶モデル系としてだけでなく、コロイド結晶材料の高品質化にも意義深いと考える。
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