研究課題/領域番号 |
26410100
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
幅田 揚一 東邦大学, 理学部, 教授 (40218524)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | サイクレン / 銀イオン / クリプタンド / 超分子 |
研究実績の概要 |
平成26年度はキラルな配位子(R)-3とアキラルな配位子2を混合することによる不斉誘起現象について検討した.初めにCDスペクトル滴定実験を行った.(R)-3の溶液にAg+を添加すると1当量まではCDスペクトル強度が増大し,さらにAg+を添加すると長波長側のCDスペクトル強度が増大した.これはAg+の量論によって錯体の構造が変化することを示唆している.滴定曲線では[Ag+]/[(R)-3]=1.0と1.7で変曲点を与えたことから溶液中で三つ葉型錯体が形成することを示している.CSI-MSを用いて錯体構造を検討したところ,三つ葉型錯体に由来するm/z=1544の分子イオンピークが観測された.以上の結果から[Ag+]/[(R)-3]=1.7の条件で(R)-3が三つ葉型錯体を形成することがわかった.次に(R)-3の錯体構造に対する溶媒の影響を検討するためにDCE/ANの比率を変え,CDスペクトルの測定を行った.[Ag+]/[(R)-3]=1.7の条件でANの含有率を下げていくとCDスペクトル強度が増大し,DCE/AN = 99.5/0.5ではCDスペクトルの強度と形が大きく変化した.この結果からANの含有率が少ないときに三つ葉型錯体を形成することがわかった.以上の結果から(R)-3はANの含有率が低い溶媒を用いたときに[AgOTf]/[(R)-3]=1.7の条件で三つ葉型錯体を形成することがわかった.そこで三つ葉型錯体を形成する条件でキラルな配位子 (R)-3とアキラルな配位子(4)の混合系を用いて不斉誘起実験をおこなった .(R)-3/([(R)-3]+[4])と分子楕円率をプロットすると非線形性となり不斉誘起現象が起こっていることを示している.以上の結果から,キラル・アキラル混合配位子系で三つ葉型錯体が形成し不斉誘起現象を制御できることがわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成ならびに各種スペクトル測定が終了し,予想した結果を得ることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
研究を遂行する上での課題は見当たらないため,当初の計画通り研究を推進する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初,マルチ分取HPLCシステム(300万円)を購入のために平成26年度予算を多くしたが,より安価にHPLCシステムを構築することができたので,初年度分を2年目と3年目に繰り越すことによって有機合成試薬や合成用器具の購入にあてるように計画を変更した.
|
次年度使用額の使用計画 |
2年目と3年目である平成27年度と平成28年度においても有機合成が主体の研究となるため,試薬および器具類の購入に充てる.また,資料整理および研究補助業務に関連する人件費にも充てる.
|