研究課題
本研究では次に示す3項目について検討した.(i) ビスサイクレンの合成とコンホメーション:2個のサイクレンをp-キシリル基で連結した(1)を合成し,Ag+錯体のX線結晶構造解析を行ったところ1の1:2 (1/Ag+) 錯体における側鎖のコンホメーションはΔΛであり,分子内メソ体であることがわかった.この化合物の1:1と1:2(1/Ag+)錯体形成時における芳香環反転の動的挙動を温度可変1H NMRによって検討した.その結果1:1錯体では錯体を形成しているサイクレンの芳香環側鎖はΔ⇔Λ反転しており,1:2(1/Ag+)錯体では両方のサイクレンの芳香環側鎖が同時に反転するΔΛ⇔ΛΔ 反転と片方のサイクレンに結合している芳香環だけが反転するΔΛ⇔ΔΔ反転(またはΔΛ⇔ΛΛ反転)がおきていた.それぞれの活性化自由エネルギーΔG‡や活性化エントロピーΔS‡から1:2(1/Ag+)錯体の両方の芳香環側鎖が同時に反転するΔΛ⇔ΛΔ 障壁が最も小さいことがわかった.(ii) キラル・アキラル銀食い分子を混合した系にAg+を添加したときの不斉誘起を試みた.その結果,x軸に[キラル配位子濃度]/[アキラル配位子濃度],y軸に分子楕円率 (θ) をプロットすると非線形性となったことから,この混合配位子系では不斉誘起現象が起こっていることが明らかになった.(iii)2個の 銀食い分子の側鎖2か所をモノ,ジ,トリ,テトラ,およびペンタエチレンオキシド鎖で連結した筒状クリプタンドを合成し,そのAg+錯体の構造を検討したところ,ジエチレンオキシド鎖で連結した化合物で一方のサイクレンがAg+を捕捉するともう一方のサイクレンが加速的にAg+を捕捉するアロステリック効果を示すことを見出した.
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