研究課題/領域番号 |
26410102
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
古荘 義雄 近畿大学, 分子工学研究所, 准教授 (00281270)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電荷支援型水素結合 / アミジン / グアニジン / オキソ酸 / ソフトマテリアル |
研究実績の概要 |
本研究では、「電荷支援型水素結合」と呼ばれる極めて強い非共有結合的相互作用を駆使して、主として超分子化学的なアプローチにより、2~3次元の有機分子の集積体を構築し、さらに実用材料を目指したマクロ構造を自在に創成する方法論を開拓することを目的としている。本研究は、これまで共有結合や通常の水素結合が担ってきた役割を、この電荷支援型水素結合で置き換えて、その強い結合力と可逆性を活かした新規材料創成のための新しい指導原理の開拓を目指すものである。 本年度は、電荷支援型水素結合を利用した1次元超分子ポリマーおよび2次元分子集積体の構築に取り組むところから始めたが、ポリアミジンと二官能性あるいは三官能性カルボン酸から結晶性の集積体を得るための検討過程において、カルボキシル基をもつテレケリックなポリマーを用いると超分子ポリマーゲルを形成することを見いだした。両末端にカルボキシル基をもつテレケリックな低分子量のポリブタジエン(Mn 4200)を、主鎖にアミジン基を有するポリアミジン(Mn 2700)をMeOH/CHCl3中で混合することで、アミジン基とカルボキシル基間の水素結合性の塩橋を介した超分子ネットワーク構造をもつ無色透明のゴム状の超分子ポリマーゲル(A1/1)を合成した。小角X線散乱解析から、このゲルはラメラ状のミクロドメイン構造をもつことがわかった。動的粘弾性解析から、この超分子ポリマーゲルは構成成分ポリマー単体に比べて力学的物性が向上していることが明らかになった。例えば、低分子量のポリブタジエンのみの場合、室温では損失弾性率(G”)の方が貯蔵弾性率(G’)より大きく、溶液として性質を示すが、A1/1は-55~+30℃の幅広い温度領域で、G’が1 MPaに達するゴム状平坦領域を示した。また、温度変化などの外部刺激に応答して動的粘弾性が可逆的に著しく変化することも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主鎖にアミジン基をもつポリアミジンと両末端にカルボキシル基をもつテレケリックな低分子量のポリブタジエンを組み合わせることでナノ相分離構造をもつ超分子ポリマーゲルが生成することを見いだすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに超分子ポリマーゲルの系を見いだすことができたので、用いるポリマーの構造などを変化させていきながら、新規材料としての可能性を探っていきたい。ポリマー内に電子のドナーやアクセプターを組み込むことにより高次に組織化された光電変換超分子集合体を構築することを目指す。それと同時に、結晶性の3次元超分子集合体の構築を目指して研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の比較的初期段階で超分子ポリマーゲルを形成する系を見いだすことができ、大量に消耗品を使用する試行錯誤的な合成実験よりも解析的な分析実験が主となり、また、比較的安価な試薬から合成できることもあったため結果として研究費の消化率が当初予定の50%程度になった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、本年度までに得られた成果をもとにして、大量に消耗品を使用する、合成的な探索実験を中心に研究を進めていく予定である。
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