研究課題/領域番号 |
26410103
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
檀上 博史 甲南大学, 理工学部, 准教授 (70332567)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ピーポッドポリマー / スピロボラート / 分子接合素子 / 超分子ポリマー |
研究実績の概要 |
スピロボラート型分子接合素子としては、これまでナフタレン環6位にホモアリル基を、また溶解性向上のために4位にp-オクチルフェニルメチル基を導入したものを用いていたが、この化合物は4位のp-オクチルフェニルメチル基を導入する際、6位のホモアリル基の末端二重結合が内部に一部異性化することが問題であった。そのため今回4位に導入する置換基をアルコキシ基とすることで、この異性化を防ぐことに成功した。アルコキシ基上のアルキル基は容易に変更することができ、簡便に多様なバリエーションのものを合成できる利点がある。今回アルキル基としてオクチル基とオクタエチレングリコール基を導入したところ、オクタエチレングリコール基を導入したものについては環状スピロボラートの状態で水溶性を示した。これらを用いてピーポッドポリマーの作製を行ったところ、従来のイリジウム錯体をゲストとして用いた条件において、以前のp-オクチルフェニルメチル基をもつものと同等の重合度を与えることが確認された。なお重合物には水溶性は見られなかったが、メタノールに可溶であった。またこのものの動的光散乱分析を行ったところ、1.0 mg/mLのDMF溶液において約10 nmの平均粒子径をもつことが確認された。またこの粒子径値は溶液濃度を0.5 mg/mLおよび0.1 mg/mLへと希釈しても変化しないことが分かった。一方アルキル基としてオクチル基を導入したものについても同様の検討を行ったが、オレフィンメタセシス反応が円滑に進行しなかったためか、ピーポッドポリマーが得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の最大の問題点であった6位ホモアリル基の異性化については、4位置換基の導入法を改良することで解決することができた。また4位に導入する置換基に多様性を付与することにも成功するとともに、オクタエチレングリコール鎖をもつものについてもピーポッドポリマー形成が可能であることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
様々な置換基を導入した環状スピロボラート型分子接合素子を調製することで、置換基の適用可能範囲を明確にするとともに、得られたピーポッドポリマーの構造情報のさらなる収集を行う。特に走査プローブ型顕微鏡と透過電子顕微鏡による構造決定に主眼を置き、鎖状構造が構築されていることを明確にする。さらに様々なゲストを内包したピーポッドポリマーを調製し、フィルム作製などを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はほぼ計画通りに執行したが、一部溶媒の使用量などが計画よりも節約できたため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
各種分子接合素子の合成に必要な試薬に加え、走査プローブ顕微鏡のプローブや電子顕微鏡観察用のグリッドなどを調達する必要があることから、これらの購入を予定している。また研究成果を公表するための学会参加に係る費用も計上する予定である。
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