研究実績の概要 |
イリジウム(III)錯体含有ピーポッドポリマーの重合条件と重合度との相関を明確にするべく、各種触媒量および反応温度において重合反応を試みた。その結果触媒量は用いたスピロボラート型分子接合素子に対して50 mol%使用した際に、最も高い重合度(分子量約100,000)を示すことがGPC分析より明らかとなった。これ以上の触媒を用いた場合には、ポリマー鎖間でのランダムな架橋が多く起こることが分散度の値などから示唆された。一方でイリジウム錯体などのゲスト不在下でのメタセシス重合を行ったところ、50 mol%では一部分子接合素子同士が結合を形成したことから、この触媒量においても一部ポリマー鎖間の結合形成が起こると考えられ、より少ない触媒量での重合が単分散なポリマー作製に必要であることが示唆された。一方中空型のピーポッドポリマーについても作製を検討した。ダミーゲストとしてイットリウム(III)錯体を用い、これを用いて一旦ピーポッドポリマーを作製し、最後にゲスト錯体を破壊して除去することを計画した。DMF中でトリフルオロメタンスルホン酸イットリウム(III)とスピロボラート型分子接合素子を共存させ、一度溶媒を留去した上で、第2世代Grubbs触媒とともにTHFに溶解して加熱撹拌した。その結果GPC分析で分子量約20,000程度の高分子が得られていることが確認された。この高分子についてICP発光分析を行ったところ、ホウ素とイットリウムの比率が約3:1であることが確認され、これより本高分子が空孔内にイットリウム(III)錯体を連続的に内包したピーポッドポリマーであることが示唆された。これをジメチルアミン塩酸塩のDMF溶液で繰り返し処理した後にICP発光分析を行ったところ、イットリウムが約90%減少していることが確認された。これより内包されていたイットリウム(III)錯体が除去され、中空型の構造となっていることが示唆された。
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