研究課題/領域番号 |
26410104
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
綱島 克彦 和歌山工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90550070)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン液体 / ホスホニウム塩 / 導電性高分子 / 電解重合 / 有機太陽電池 / 色素増感型太陽電池 |
研究実績の概要 |
イオン液体はユニークな物理化学特性を有するため、色素増感型太陽電池の次世代電解質として注目されている。一方、色素増感太陽電池に用いられる白金電極の代替としてπ共役系導電性高分子材料が検討されているが、イオン液体電解質系で用いられた研究例はほとんどない。そこで本研究は、リン原子由来の特異性と機能性を発現する芳香族リン系イオン液体を採りあげ、それらと導電性高分子材料を効果的に組み合わせることによって、高度に機能化された全く新しい色素増感太陽電池電極系の構築を試みることを目的とした。 平成26年度は本研究の三カ年計画の初年度であり、イオン液体電解質からのアプローチを主体として、芳香族四級オニウムカチオンの設計とそのイオン液体の創製を試みた。まず実験的観点から合成化学的アプローチの取りやすいものとして、カチオンの側鎖中にπ共役系が含まれるタイプのものとして、フェニル基やアリル基が含まれる四級ホスホニウムカチオンをデザインした。これに対応するアニオンとしては、近年リチウム電池電解質として注目されているN(SO2F)2-(FSA)を採用したところ、従来型のアニオンを用いた場合のイオン液体よりも低粘性かつ高導電性のイオン液体が得られることが分かった。さらなる発展系として、色素増感型太陽電池の電解質として注目されているB(CN)4-(TCB)アニオンやカルボン酸アニオンを主体とする四級ホスホニウム型イオン液体を新たに合成し、特異な輸送特性を示すイオン液体のシリーズを提案した。 加えて、FSAアニオンを有する四級ホスホニウム型イオン液体のいくつかについては既にピロールの電解酸化重合の電解質として適用し、高導電性の電解重合膜を形成することが確認されている。これを足掛かりとして、当該イオン液体と導電性高分子とを融合させた新たな色素増感型太陽電池電極系の開発を推進していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画されていた太陽電池特性評価については現在においても検討中であり、今のところ十分な成果が得られていない状況ではあるが、ソーラーシミュレータの導入は完了しており、現時点では太陽電池セル評価技術の確立を目指して作製条件の最適化を行っている。一方では、一年の研究期間中にFSAアニオンやTCBアニオンを主体とする他に類を見ない豊富な種類のホスホニウム型イオン液体の創出に成功し、加えて電解重合反応に適用して導電性高分子材料との複合材料への展開の可能性を見出すことができたこともあり、全体的な研究の進行状況としては概ね順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては、当初の研究計画に従って基本的には大幅な変更は行わず、導電性高分子材料に及ぼす四級ホスホニウム型イオン液体の効果の解析を主眼に研究開発を推進する。具体的には、これまでポリピロールに限定されていた高分子材料系を、ポリチオフェン系の導電性高分子系に拡張し、新たなイオン液体-導電性高分子複合系を見出していく予定である。また、上記で得られた情報をイオン液体の設計にもフィードバックしながら新たなイオン液体電解質の探索も続行し、新たな色素増感太陽電池電極系の創製も試みる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度では色素増感型太陽電池セル評価技術の確立が十分に進行せず、そのため電解重合に関する試薬(各種モノマー材料等)や太陽電池セルの部材等(電極材料、半導体ペースト材料、電解液、増感色素等)の購入を次年度に延期した。さらに、成果発表と調査のための海外での国際会議参加についても、研究スケジュール上、適当な国際会議がなく次年度に延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画した平成27年度の研究計画に大幅な変更はなく、上記次年度使用額を加算した翌年度分の助成金額については、当初の計画通りの翌年度分の充当額に加えて、平成26年度にて延期した電解重合に関する試薬や太陽電池セルの部材等の購入および海外で開催される国際会議参加についても充当する。これらの試薬や部材等の購入や国際会議参加については平成27年度での研究開発計画にも密接に関連するものであり、翌年度の研究推進に支障はない。
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