研究課題/領域番号 |
26410105
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
石井 努 久留米工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (60346856)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 会合 / 発光 / ドナー・アクセプター / 生体検出 / 糖質 |
研究実績の概要 |
1年目は、水溶性官能基を導入した種々のドナー・アクセプター分子を合成し、100% 水系で会合発光システムを構築した。 当研究室で開発しているトリフェニアミン・ベンゾチアジアゾールを基盤としたドナー・アクセプター分子に対し、水溶性付与を目的としてヘキサエチレングリコール鎖の導入を行った。1本のヘキサエチレングリコール鎖を導入した分子では、極性溶媒への溶解度が向上しメタノールへの可溶を示したが、水には不溶であった。100% 水中への溶解は、2本のヘキサエチレングリコール鎖の導入により達成できた。本2本鎖化合物は 100% 水中で赤色発光を発現し、メタノール中での消光状態と比べて発光が著しく向上している。メタノール中で溶媒和により消光していた分子が、会合体を形成し発光性に変化した結果である。本会合体形成は、吸収帯の長波長シフトと発光帯の短波長シフトから支持され、更に電子顕微鏡観察において 3-5 nm サイズの球状会合体の形成が確認できた。蛍光寿命測定に基づく速度論的解析の結果より、発光発現のメカニズムが会合体形成に起因した溶媒和消光過程の抑制であることが判明している。 以上の結果より、ドナー・アクセプター分子への2本の水溶性ヘキサエチレングリコール鎖の導入により、100% 水系で会合発光システムの構築に成功した。更に、1本のヘキサエチレングリコール鎖のみの導入においても、鎖末端にアンモニウムイオン官能基を導入することで、水溶性及び赤色発光の発現が確認されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、水溶性ドナー・アクセプター分子を基盤とした会合発光システムの構築に成功している。水溶性官能基の種類や本数に基づく、水溶性発現及び会合発光発現の一般性が確立されつつある。 今後、本会合発光システムを改良することで、糖質分解酵素活性を会合体の形成・解離に基づく発光変化で検出できるシステムの構築に繋がる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降は、引き続き会合発光システムを構築すると共に、1年目で合成した水溶性蛍光色素の生体蛍光検出の可能性を探求する。生体検出対象としては、広く研究され情報収集が容易な糖質分解酵素を選択する。 まず、1年目に合成した水溶性蛍光色素に糖質部を導入し、水溶性向上によりモノマー消光を評価する。モノマー消光発現では、糖質部の導入位置を制御することが重要である。それらのスクリーニングに着手し、ドナー・アクセプター分子がモノマーとして単分散する系を構築し、その結果、溶媒和消光状態を発現させる。本モノマー消光の評価は、1年目で確立した会合特性・発光特性の評価に従うことで、効率的に遂行する。 最後に、糖質部を導入した蛍光色素の糖質分解酵素活性を評価する。反応部位として糖質部位を導入したドナー・アクセプター色素は、糖質分解酵素との反応後は反応部位が切断されるため、疎水性向上により会合体形成が可能となり、強い蛍光を発する。すなわち、糖質分解酵素添加後に会合発光が確認できれば、切断が進行したと判断できる。本評価も、1年目に確立した会合特性・発光特性の評価に従い、系統的に遂行する。本知見を基に、様々な糖質部位を導入したドナー・アクセプター系の糖質分解酵素活性を検討し、消光から発光に変わる「OFF-ON 型の蛍光検出」の可能性を探求する。
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