研究課題/領域番号 |
26410107
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
亀田 直弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 主任研究員 (20517297)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 両親媒性分子 / 有機ナノチューブ / 酵素 / ナノリアクター |
研究実績の概要 |
光応答性ユニットである4-アミノ-4’-カルボキシル-アゾベンゼンの両端にそれぞれ水素結合ユニットとしてオリゴグリシン残基、水素結合ユニット及び疎水性相互作用ユニットとして末端にアミノ基を有する糖脂質をアミド結合により導入した。得られた両親媒性分子をpH 5~10に調整した水中へ加熱分散後、室温まで徐冷することで自己組織化を行った。自己組織化体の形態は、pH、即ち両親媒性分子の末端オリゴグリシンアミノ基のプロトン化状態に依存し、中性付近で内径10 nm、膜厚3 nmのナノチューブを形成した。分光測定より、ナノチューブは両親媒性分子が平行パッキングした単層単分子膜構造から成ることが分かった。 ナノチューブに紫外光を照射したところ、アゾベンゼン部位のトランス→シス構造異性化が観察された。そこに可視光を照射すると完全にトランス体に戻った。ナノチューブは紫外光照射後、その内径サイズ、膜厚を維持しつつヘリカルナノコイルへと形態変化した。続く可視光照射により、ヘリカルナノコイルは元のナノチューブへと戻った。ナノチューブを構成する単分子膜は結晶固体状態であるが、光構造異性化及びそれに伴う形態変化は可逆的に進行することが明らかとなった。 ナノチューブにカプセル化した酵素は、そのナノ空間における束縛効果により熱安定性が著しく増大すること、酵素反応の速度はバルク中のそれと比較し減少することを見出した。環境応答蛍光プローブを用いてナノ空間内の水の物性を調べたところ、バルク水と比較し、高粘性・低極性であることを突き止めた。このような水の物性が、ナノ空間における基質の拡散を抑制していることが推察された。一方、光照射によりナノチューブをナノコイルへと形態変化させると、ナノ空間への基質の進入も容易となり、酵素反応の速度もバルク系と同程度であった。光刺激により、カプセル化酵素の反応速度制御が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26~27年度研究計画に記載した研究項目<光駆動性有機ナノチューブの構築>及び<ナノチャンネル内の溶媒の物性解析>について、上記研究実績の概要のような成果を得ているため。
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今後の研究の推進方策 |
上記研究実績の概要で得られた光刺激形態可変機能を有するナノチューブに対して、研究項目<酵素の包接化と磁性ナノ粒子によるキャッピング>を実施し、酵素リアクターとしての性能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の値段が、カタログ価格より安かったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度研究計画に必要な磁性ナノ粒子の購入に使用する。
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