光応答性ユニットとしてアゾベンゼンを含有するペプチド・糖脂質分子を水中で自発的に組織化し、有機ナノチューブを選択的に調製することができた。凍結乾燥した有機ナノチューブに酵素を添加したところ、毛細管力により、有機ナノチューブ内空間に酵素が効率的に包接された。酵素を包接した有機ナノチューブの分散水溶液と表面に親水基と疎水基を併せ持つ磁性ナノ粒子の分散水溶液を混合した結果、有機ナノチューブの両端を磁性ナノ粒子でキャッピングすることに成功した。 得られた有機・無機ハイブリッドナノチューブは、紫外光照射によるアゾベンゼンユニットのトランス→シス構造異性化に伴い、内径サイズや膜厚を維持しつつ、ヘリカルナノコイルへと形態変化した。これにより、酵素が包接されたヘリカルナノコイルへの反応基質の取り込みが可能となり、酵素触媒反応がONとなった。一方、続く可視光照射によるアゾベンゼンユニットのシス→トランス構造異性化は、再びナノチューブへの形態変化を誘起し、酵素触媒反応をOFFにした。磁石を用いて、反応溶液中からナノチューブを簡便に回収することができた。 可逆的な形態変化後もナノチューブやヘリカルナノコイルの内空間から、酵素と磁性ナノ粒子の放出が起こらないことを確認した。バルク水溶液中の酵素は、時間の経過や反応の繰り返し操作により、次第に触媒活性が失われていったが、本システムでは同条件下も高い触媒活性を維持できることが明らかとなった。
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