研究課題/領域番号 |
26410108
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
美多 剛 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00548183)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / カルボキシル化 / C-H活性化 / C(sp3)-H結合 / 遷移金属錯体 / ロジウム / メタラサイクル |
研究実績の概要 |
平成26年度は、基質として8-メチルキノリンと種々の金属塩 (e.g., Pd(OAc)2, [Cp*RhCl2]2) から調製したメタラサイクルを用いて、二酸化炭素とのカルボキシル化の反応性を確かめた。8-メチルキノリンのベンジル位のC-H活性化は容易に進行し、対応するパラダサイクル、およびローダサイクルが効率良く得られることがわかった。続いて、調製したパラダサイクルを用いて二酸化炭素によるカルボキシル化の検討を行ったところ、パラダサイクル自身が非常に安定なためか反応性に乏しく、いかなる反応条件(種々の塩基や還元剤の添加)においても、カルボキシル化体は一切得られなかった。一方、ローダサイクルを基質とし炭酸セシウムを塩基として用いた場合、8-メチルキノリンのベンジル位がカルボキシル化された目的物が少量だが得られることがわかった。この場合、カルボキシル化されたローダサイクルも同時に生成していることから、C-Rh結合に二酸化炭素が挿入したというよりかは、ローダサイクルの形成によりベンジル位の反応性が向上することで、塩基による脱プロトン化を伴う二酸化炭素の挿入、もしくはロジウムカルベノイド中間体を経て二酸化炭素との反応が進行したと考えられる。本反応は塩基として炭酸セシウムの他にカリウムブトシキドを用いた場合にも進行し、新たな形式のC-H結合カルボキシル化反応となり得るものと考えられる。現在、カルボキシル化体の収率の向上に向けた反応条件の精査を行うとともに、パラジウムやロジウム以外の遷移金属を用いて検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に従い、平成26年度はC(sp3)-H結合の切断により生じるメタラサイクルからのカルボキシル化を検討した。すなわち、8-メチルキノリンのベンジル位のC-H結合活性化により生じるパラダサイクル、ローダサイクルを合成して、二酸化炭素によるカルボキシル化反応の反応性を調査した。その結果、パラサイクルを用いた場合には反応が進行しなかったものの、ローダサイクルに塩基を加えた場合には、低収率ながら目的とするカルボキシル化体が得られることがわかった。現在、カルボキシル化の反応条件の検討や、逆反応を抑制するための添加剤の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、8-メチルキノリンから生成したメタラサイクルからの二酸化炭素によるカルボキシル化の検討を引き続き実施する。収率の向上が見込まれない場合は、CO2とのカルボキシル化で生じる金属カルボキシラートの捕捉を効果的に促進するべく、アルキン、エポキシド等の種々の官能基を有する基質の設計、および合成を行う。一方で、ベンジル位の活性化のみならず、アルケン化合物のアリル位の活性化に取り組む予定である。等量反応が実現でき次第、触媒反応の開発を移る。すなわち、金属カルボキシラートを再度C-H切断活性のある金属種に戻すために塩基、および酸の添加実験を実施し、触媒的なC(sp3)-Hカルボキシル化反応の開発を達成すべく検討を重ねる。
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