研究課題/領域番号 |
26410110
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田邉 資明 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (20384737)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 窒素固定 / ヒ素 / アルシン / ANA型 / モリブデン / ルテニウム / 脱水素化 / 触媒 |
研究実績の概要 |
リン―窒素―リンの三座で配位するPNP型ピンサー配位子を有するモリブデン及びルテニウムの架橋型窒素錯体は、それぞれ常温常圧での窒素からのアンモニア合成及びアルコールの脱水素化反応に対して触媒活性を示すことが知られている。一方でホスフィンは酸化を受け易く、触媒失活の一因となる。そこでリンと同族で類似の配位環境をとり、より安定に3価の酸化状態を保ち、より立体的に嵩高くなることが知られているヒ素に着目し、ヒ素―窒素―ヒ素の三座で配位するANA型ピンサー配位子を有するモリブデンおよびルテニウムの架橋型窒素錯体を新規に合成し、種々の反応に対する触媒活性を比較・検討した。 新規に合成したANA型ピンサー配位子tBuANA (C5H3N(CH2PtBu2)2)と[MoCl3(thf)3]との反応により、ANA型ピンサー配位子を有するモリブデン錯体が得られた。さらに窒素下で本錯体を還元したところ、対応するPNP型ピンサー錯体とは異なる配位化学を示す、モリブデンの架橋型窒素錯体が単離された。またtBuANAと[RuCl2(PPh3)3]との反応からは、ANA型ピンサー配位子が配位したルテニウムの架橋型窒素錯体が得られた。二核モリブデン窒素錯体について常温常圧での窒素からの触媒的なアンモニア生成を検討したが、生成量は化学量論量に留まり、触媒として働くPNP型ピンサー錯体とは対照的であった。一方二核ルテニウム窒素錯体は、対応するPNP型ピンサー錯体に比べて触媒活性は低いものの、アルコールの脱水素化反応やアルコールとアミンの脱水素カップリングの触媒として働き、PNP型ピンサー錯体とは異なる反応選択性も認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的では、ANA型ピンサー錯体を用いた窒素固定と新規触媒反応の開拓を目指していたが、ANA型ピンサー配位子を有するモリブデンの窒素錯体からは化学量論量のアンモニアの生成に成功しており、さらにANA型ピンサー配位子を有するルテニウムの窒素錯体がアルコールの脱水素化反応の触媒として働くことを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
配位子としてヒ素のほか、ホスファベンゼンなどの他のヘテロ原子を含むピンサー配位子を合成し、これらの新規ピンサー配位子を有する新規錯体を合成し、常温常圧で窒素からアンモニアへと変換する反応への触媒活性を検討する。
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