研究課題/領域番号 |
26410112
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
秦 猛志 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (40419271)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | C-H結合活性化 / 遷移金属触媒 / ロジウム / パラジウム / 含酸素ヘテロ環 / 含窒素ヘテロ環 / ヘテロπ共役分子 / ベンゾジフラン |
研究実績の概要 |
報告者は,種々の遷移金属触媒によるC-HまたはSi-H結合の直截的変換反応を見出し,既に報告している (J. Am. Chem. Soc. (2009年),Angew. Chem. Int. Ed. (2010年), Angew. Chem. Int. Ed. (2012年), Adv. Synth. Catal. (2012年)).そこで,本研究では,上述の反応の更なる適用性の拡大を狙い,Rh, Pd, Fe, およびY触媒のC-HまたはSi-H結合活性化反応およびその応用展開を検討することとした.特に,平成27年度は、以下の3項目に関して研究を推進し,それぞれの項目で成果を得ることができた.1) Rh触媒のC-H結合活性化によるアルケニルエーテルからの含酸素ヘテロ環の立体選択的な合成手法を見出した.更に,その不斉触媒化も達成した.2) シクロプロピル置換スルホンアミド誘導体のハロアセチレンへの選択的求核付加とPd触媒のC-H結合活性化により,スピロ含窒素ヘテロ環を合成する手法を見出した. 3) ヒドロキノンのハロアセチレンへの選択的ダブル求核付加とPd触媒のダブルC-H結合活性化により,3環性ヘテロπ共役分子であるベンゾジフラン誘導体を短工程で合成する手法を見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究の成果として,以下の結果が得られた.1) スルホニル置換アリル(ホモプロルギル)エーテルにRh2(tfa)4触媒 (tfa = CF3CO2-) を作用させると,C-H結合活性化反応により,アリル置換ジヒドロピラン誘導体を得ることができた.更に,光学活性ロジウム触媒を作用させると,90%ee以上の不斉収率で,キラルなアリル置換ジヒドロピラン誘導体を得ることができた.2) シクロプロピル置換スルホンアミドに対して,リン酸カリウム存在下でブロモアセチレンを作用させると,位置および立体選択的付加が進行し,立体化学の定まったブロモオレフィンを得ることができた.更に,このオレフィンに対し,Pd(OAc)2触媒を作用させると,C-H結合活性化反応により,スピロピロリジン誘導体を得ることができた.3)炭酸セシウム存在下,ヒドロキノンに対してクロロアセチレンを作用させると,選択的にダブル付加が進行し,ビスクロロオレフィンを得ることができた.更に,Pd(OAc)2触媒を作用させると,C-H結合活性化反応により,ベンゾジフラン誘導体が簡便に得られることがわかった(日本化学会第96春季年会にて口頭発表済み).
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成28年度は,本研究の更なる飛躍を目指して,C-HまたはSi-H結合の直截的変換反応の開発および応用利用をより一層検討する.特に,一部予備的知見で見出している以下の知見を集中的に展開する.1) キラルFe触媒により,光学活性過酸化物の合成法の開発をおこなう.得られた過酸化物を不斉酸化剤や不斉ビルディングブロックとして利用し,天然有機化合物合成への展開をおこなう.4) YCl3/MeLi触媒存在下,シランとビスビニルグリニャール試薬から,シロール骨格を有する新規なπ共役分子合成をおこなう.
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次年度使用額が生じた理由 |
他の大型予算(科学技術振興機構 戦略的研究推進事業 さきがけ)の獲得により,使用しない分が生じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
研究の加速化のために,主に試薬品代および小型備品購入に使用する.
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