研究実績の概要 |
本研究は、二酸化炭素の電気化学的多電子還元反応を実現するために必須の技術である 一酸化炭素の還元的活性化を目指し、COを論理的に還元するためのシステムを含む金属錯体の開発と、その応用によるCOの触媒的多電子還元反応への展開を目的とする。 本年度は、これまでに得られた錯体の安定性に関する知見に基づき、Ru-Rh錯体[(tpy)Ru(CO)(μ-bpp)RhClCp*](PF6)2 ([2])およびRu-Ir錯体[(tpy)Ru(CO)(μ-bpp)IrClCp*](PF6)2 ([3]) を合成した。それぞれの錯体の酸化還元電位を比較し、[2]に対して[3]の[M]3+/[M]+(M: Rh or Ir)が0.1 V程度負側に現れることを明らかにした。これは、COの還元反応を行う上で非常に不利になる可能性を示唆している。これらの錯体を用いて、COのない状態での電気化学的還元反応を行い、生成物について解析を行ったところ、原料錯体はほぼ消失し、M上のCl配位子の脱離、Ru上のCO配位子の脱離などによる幾つかの生成物を確認した。これは、[(tpy)Ru(CO)(μ-bpp)RhCl(tpy)]3+ ([1]) の場合に、[Rh(tpy)]ユニットが脱離した成分が多く見られたことと対照的であり、[2],[3]が電解還元条件下でその二核構造を保っていることを示している。 [2]および[3]を触媒としたCOの電解還元について、幾つかの条件で反応を行った。僅かな量のメタノールが生成していると考えられる結果が得られているが、前年度までに得られている知見を上回るものではなく、さらなる検討が必要である。 以上、本研究では、COの電気化学的還元反応を触媒可能な錯体の開発について検討し、反応条件下で骨格を保つことのできる錯体の創製に成功した。今後はさらなる反応条件の検討による反応性の向上が課題となる。
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