研究課題/領域番号 |
26410114
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 淳一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20402480)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機金属錯体 / 不斉触媒 / ピンサー型錯体 / カルベン配位子 / オキサゾリン配位子 / アルキニル化 |
研究実績の概要 |
前年度に合成しオキサゾリンとN-ヘテロ環状カルベンを組み合わせた配位子を有するロジウム錯体を用いた不斉触媒反応を検討した。本触媒がケトン類とアルキン類との間の直接的な不斉アルキニル化に活性を示し、4置換炭素を有するプロパルギルアルコールを高収率、高エナンチオ選択的に得ることに成功した。本反応では芳香族アルキンとともに脂肪族アルキンも利用することが可能であり、多様なアルキンを利用することが可能である。さらに、速度論実験と量論反応を検討することによって、反応の詳細を明らかにした。 また、ルテニウム触媒を用いたタンデムカップリング反応を検討した。その結果、アルキン類とα、β―不飽和ケトン、アルデヒドによる連続的な炭素―炭素結合生成反応の形成反応の開発に成功した。本反応は、市販の試薬からワンポットで複雑な骨格を形成できる点に特徴がある。反応機構を検討したところ、アルキンの直接的なC-H活性化と続くα、β―不飽和ケトンへの共役付加反応によって、ルテニウムエノラート中間体が形成し、連続的にアルデヒドが補足されることによって、アルドール反応が進行することを明らかにした。 さらに、新規オキサゾリン―カルベン配位子の合成とルテニウム錯体の合成を検討した。その結果、配位子のC-H活性化を経由する新規ルテニウム錯体の合成に成功した。合成したルテニウム錯体はケトン類の水素化反応に活性を示すことを見出した。特にアントラセン環を有するケトンでは、C=O結合の水素化ともにアントラセン環の水素化も進行した。還元剤と配位子の置換基を適切に選択することによって、水素化の位置選択性を制御できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規オキサゾリン―カルベン配位子の合成に取り組み、多様な分子構造を有する配位子を得ることに成功した。さらに、ロジウムとともにルテニウム錯体へと展開することができた。また、ケトン類の不斉アルキニル化、3成分のタンデムカップリング反応、水素化反応など種々の触媒反応の開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに合成したオキサゾリン―カルベン配位子を有する金属錯体について、イリジウム、コバルト、鉄などの導入を検討する。特に鉄やコバルトに関しては、C-H活性化による配位子への金属導入が困難となる場合が予想されるので、配位子前駆体の構造、反応条件の最適化を検討する。 触媒反応について、ケトン類のアルキニル化反応の基質一般性の拡張、触媒活性の向上、エナンチオ選択性の改善などを検討し、触媒反応の改良を進める。さらに、計算科学を取り入れて、反応機構の解析を実施する。 またイリジウム錯体では、アルカン類のC-H活性化に取り組み、アルカンの官能基化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規ルテニウム錯体の合成について、反応の最適化と精製方法に問題が生じたため、その解決のため、予定よりも研究が遅れた。そのためにルテニウム錯体を用いた触媒反応の検討に遅延が生じ、試薬や消耗品の購入費が減額した。
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次年度使用額の使用計画 |
反応試薬、反応溶媒、分析用重溶媒などの購入に50万円、NMRやMSなどの機器分析費に70万円、分析用カラムに20万円を使用する。
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