研究実績の概要 |
本研究の目的はアルコールの光触媒変換を鍵過程とした高選択的な有機合成反応を開発することにある.具体的には1)アルコールの脱水素化反応,および 2)アルコールを用いるアミンの N-アルキル化反応を中心に研究を展開した. 1)アルコールの脱水素化反応 可視光応答型光触媒 Ru/SrTiO3:Rh を用いるアルコールの脱水素化反応について,光触媒の構成元素の種類や割合,光触媒を焼成する際の昇温速度などがアルコールの脱水素化反応の効率に与える影響を明らかにした.さらに単純な直鎖脂肪族一級アルコールからアルデヒドへの脱水素化反応が,金を助触媒として担持した二酸化チタン光触媒 (Au/TiO2) と紫外-可視光を用いることで選択的に進行することを明らかにした.本手法では従来の熱反応ではしばしば保持されなかった C=C 二重結合などの官能基を損なうことなくアルコールからアルデヒドへと脱水素化することができた. 2)アミンの N-アルキル化 銀を助触媒として担持した二酸化チタン光触媒 (Ag/TiO2) とアルコールを用いたアミンの光 N-アルキル化反応の最適条件とアルコールとアミンの適用範囲を明らかにした.特にメタノールを用いた際に幅広いアミンを直接 N-メチル化できること,必須アミノ酸の選択的な N-メチル化とアルツハイマー型認知症治療薬である rivastigmine の合成も可能であることを示した.さらに Au/TiO2 と Cu/TiO2 を混合して用いると,一級アミンの高速 N,N-ジメチル化や一級アミンの選択的なモノアルキル化,リシン残基の官能基選択的なアルキル化が可能であることを明らかにした.またパラジウムを助触媒として担持した二酸化チタン光触媒 Pd/TiO2 では Ag/TiO2 とは異なるアミンの効率的な N-メチル化が可能であることも明らかにした.
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