研究課題
本研究課題では、申請者の開発したアニオン促進型分子内 Diels-Alder 反応の反応系の拡張と合成的展開を検討する。具体的には、アリール-1,6-エンイン系での反応の詳細な検討とジイン末端にヘテロ芳香族化合物であるピロール、インドールを導入した基質を用いたインドール、カルバゾール合成を行う。また、多環芳香族化合物合成法としての応用に重要となる、環化生成物中のリンカー部分の効率的官能基変換を検討する。その後、本反応系を活用して重要な生理活性を有するアリールナフタレンリグナン、インドールアルカロイド、カルバゾールアルカロイドの効率的合成に取り組む。平成26年度は、インドールがアルキン末端に結合した1,6-ジインを用いてカルバゾール合成の検討を行った。得られたインドール結合1,6-ジインをDMSO溶媒中、Triton Bを用いて環化反応を行ったところ、低収率ではあるが目的カルバゾールが得られた。塩基の種類、当量などを検討して収率の改善を検討したが、顕著な改善は達成できなかった。これについては次年度引き続き検討を継続予定である。一方、このインドール結合1,6-ジインをハロゲン化インドールと1,6-ジインのSonogashira Couplingで合成した際、副生してくるインドールが両ジイン末端に結合したインドール結合ジインが温和な条件で熱的分子内Diels-Alder反応することを見出した。この反応についても反応性、合成反応としての有用性について次年度以降検討していく。
2: おおむね順調に進展している
インドール結合1,6-ジインを用いた分子内アニオン促進型Diel-Alder反応は低収率ではあったが、反応が進行し置換カルバゾールが得られた。この反応に用いる基質合成の検討過程にて、副生成物であるインドールが両ジイン末端に結合したインドール結合ジインが熱的分子内Diels-Alder反応において高活性であり、温和な条件で加熱することで置換カルバゾールが選択的に得られることを見出した。これは反応性の高さが興味深いのみならず、新規なカルバゾール合成法として合成化学的にも非常に興味深い結果である。今後、基質適用限界、反応性について詳細に検討し、新規なカルバゾール合成法として確立する。
アニオン促進型分子内Diels-Alder反応による置換カルバゾール合成については次年度も引き続き検討していく。またインドール結合1,6-ジインの熱的分子内Diels-Alder反応については、基質適用限界、反応性について今後さらに検討を継続する。平成27年度は新たな検討課題として1,6-ジインの新たなリンカーの検討とアリールナフタレンリグナン類の効率的合成法についても検討を行う。
学会発表旅費として計上していた旅費、その他経費として計上していた論文投稿料、英語校閲料が、予定額より支出が少なかった。予定していたよりも使用試薬、有機溶媒が少なかったため、消耗品支出が少なくなった。これらは平成26年度に限った一時的なものである。
平成27年度は当初計画に従い、研究を実施し、予算執行する予定である。
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PLOS ONE
巻: 9 ページ: e107976
doi: 10.1371/journal.pone.0107976.
Journal of Cancer
巻: 5 ページ: 572-584
doi:10.7150/jca.8865
Journal of Stem Cells & Regenerative Medicine
巻: 10 ページ: 2-7
http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~sakakura/index.html