研究課題/領域番号 |
26410123
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
西脇 永敏 高知工科大学, 工学部, 教授 (30237763)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環変換反応 / ニトロピリジン / ニトロアニリン / 多成分系反応 / ジニトロピリドン / ビシクロ中間体 |
研究実績の概要 |
新規な非線形光学材料の開発をしたり、分子設計により効率良い材料の開発を目指したりするためには、自在に電子供与基と電子求引基を導入できる手法を開発することが不可欠である。本研究では、電子求引基としてハロゲン原子2個分に相当するニトロ基に着目し、多官能化されたニトロ化合物の合成手法の開発を行なった。すなわち、3,5-ジニトロ-2-ピリドンを基質に用い、酢酸アンモニウムを窒素源に用い、ケトン類との3成分系環変換反応を行ない、ニトロアニリン類やニトロピリジン類の合成を検討した。本反応では、ジニトロピリジンのC4-C5-C6ユニットが生成物の部分構造として取り込まれていることから、ジニトロピリドンは超不安定試剤「ニトロマロンアルデヒド」の合成等価体として働いていることになる。 まず、芳香族ケトンやシクロアルカノンを基質に用いて、上記の3成分系環変換反応を行なったところ、6位にアリール基を有したり、5,6位にシクロアルカンが縮環した3-ニトロピリジン類がそれぞれ効率良く得られることを明らかにした。また、アルケニル基やアルキニル基を有するケトンを用いれば、これらの置換基を有するニトロピリジンが得られることも明らかにした。これらの骨格は、通常、鈴木カップリング、薗頭カップリング、Heck反応などで合成されるものであるが、いずれも遷移金属触媒を用いる必要がある。一方、本反応はそのような金属を使用しないことから、環境負荷を軽減した合成手法であると言える。 さらに、α水素を2ケ所有する脂肪族ケトンを用いれば、異なった反応性を示し、ニトロアニリン誘導体が生成することを明らかにした。本反応はケトンを替えるのみで、種々の置換基を導入でき、Friedel-Crafts反応などの他法では合成できない骨格を簡便に構築することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
環変換反応について検討を行ない、種々の置換基を有するニトロピリジン類の合成に成功した。本法は他の方法では入手が困難な骨格を簡便な実験操作で効率良く合成できることから、当該分野に新しい方法論を提供できたと言える。また、本研究の目的である非線形光学材料の候補化合物であるニトロアニリン誘導体の合成にも挑戦し、ベンゼン環だけでなくアミノ基も修飾することにも成功した。本法を利用すれば、最大4ヶ所に置換基を導入することを容易に行なうことができ、分子設計が容易になる。この進展速度は、当初の計画を上回るものであり、順調に進展していると言える。 次の段階の、非線形光学材料としての評価には時間と労力が必要であることから、計画よりも早く進行して得た時間を化合物の評価、設計に利用することができる。
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今後の研究の推進方策 |
3つのアプローチによって研究を遂行していく予定である。 1つ目は、基質としてアルデヒド類を用いた3成分系環変換反応を検討する。これまでは、ケトン類を基質に用いて官能基化ピリジンの合成に一定の成果を得た。しかし、反応性が高いアルデヒドを用いた場合は、副反応が進行しやすく、これまでの手法を単純に適用することができないことが,今後の課題として残されていることから、アルデヒドを基質に用いた環変換反応に挑戦する。 2つ目はニトロアニリンの骨格を構築することに成功したものの、官能基を有する基質に関してはまだ成功してはいない。そこで、この反応について条件などをさらに詳細に検討し、多官能化されたアニリン誘導体の合成を目指す。 3つ目は環変換反応によって得られたニトロアニリン類をついて、非線形光学材料としての物性評価を行なう。そのために、本研究費で購入した蛍光分光光度計を利用して測定を行なう。まず評価方法の確立をした後、各種ニトロアニリン類について評価を行なうとともに、その結果をフィードバックしながら、より効率の良い材料の分子設計を行なう。
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