研究実績の概要 |
(1)キラルMOFを触媒に用いた不斉有機合成反応の開拓を目的として本年度は以下の研究を実施した。まず、アニリン誘導体によるcis-スチルベンオキシドの不斉開環反応を検討したところ、反応温度を上げるほど生成物であるアミノアルコールの光学純度が向上するという興味深い結果が得られた。cis-スチルベンオキシドとN-メチルアニリンを触媒量の(R)-CuMOF-1存在下、MeOH 中20 ℃で48 時間反応させると、2 % ee の(1S, 2S)-4b が収率1%で得られた。これに対して、80 °C で48 時間反応させると64 %ee の(1S, 2S)-4b が収率58 %で得られるという極めて興味深い結果が得られた。また、反応溶媒を2-PrOH に替えると、エナンチオ選択性が逆転して(1R, 2R)-4b が得られることがわかった。 (2)(R)-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフタレン-4,4'-ジ安息香酸(a)及び(R)-2,2'-ジメトキシ-1,1'-ビナフタレン-4,4'-ジ安息香酸(b)を合成して新規ホモキラルMOF合成を行い、その結晶構造を明らかにするとともに、これらのホモキラルMOFをキラル固定相に用いたHPLCカラムによるエナンチオマー分離を検討した。MOF骨格に水酸基を持ち三次元ジャングルジム状の(R)-CuMOF(a)カラムではこれらのスルホキシド類に対して良好な分離能を示した。また、いずれの場合もS-体がR-体よりも先に溶出する。これに対して、MOF骨格にMeO基を持ち二次元層状構造の(R)-CuMOF(b)では全く分離能を示さないことがわかった。また、(R)-CuMOF(a)カラムによるスルホキシド類のエナンチオマー分離においては、o-置換スルホキシドの方がp-置換スルホキシドよりも高い分離能を示した。
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