研究実績の概要 |
平成26年度は、“グルコース環の不斉なねじれにより軸不斉が制御されたビフェニルユニット”を主鎖骨格に含有する新規π共役高分子を合成し、それらのキロプティカル特性について検討した。 出発原料に9,10-フェナントレンキノンを用いた七段階の反応によりグルコース連結型ビフェニルユニットを有するジエチニル化合物(Gl)を合成した。得られたGlと5,5’-ジヨード-2,2’-ビチオフェンとの薗頭カップリングによる重合を、パラジウム触媒存在下、THF-ジイソプロピルアミン混合溶媒中、60 °Cで行うことにより、数平均分子量が数万程度の新規π共役高分子poly-1を得た。 Poly-1の円二色性(CD)スペクトルをクロロホルム及びクロロホルム-アセトニトリル混合溶媒中で測定したところ、共役主鎖骨格に由来する吸収領域(300~500 nm)に明確なコットン効果が観測された。また、アセトニトリルの割合が高くなるに連れて、吸収スペクトルにおける淡色効果及びCD強度の著しい増大が見られた。また、ポリマー濃度を0.01~1.0 mMの範囲で変化させてもCD及び吸収スペクトルにほとんど変化が見られないことから、溶媒の違いによるスペクトルの変化がポリマーの会合状態によるものではなく、一分子内のコンホメーション変化に起因することを示唆している。おそらく、アセトニトリルを含む溶媒中では、poly-1はらせん構造のような高次構造を形成していると考えられる。 クロロホルムをキャスト溶媒に用いてpoly-1薄膜を調製し、固体状態におけるCD測定を行ったところ弱いながらもコットン効果が観測された。本フィルムをアセトニトリル蒸気にさらしたところ、CD強度の増大及び吸収波長のシフトが観測され、固体状態においても外部環境の変化により、poly-1のコンホメーションをスイッチングできることが明らかとなった。
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